3.拘置所編

31話「手紙、書いていいですか」

井原君は、いつも落ち着いていた。その雰囲気は、他の同世代の暴力団とは違っていた。拘禁生活の経験が長いからなのか。それとも、これまで生きてきた人生経験からくるものなのか。理由は分からないが、井原君には常に余裕のようなものがあった。私は、井原君...
3.拘置所編

30話「不正授受」

その日の午後、午睡が終わり布団を片付けていると、お爺さんは自分の布団も片付けず、棚の前でゴソゴソしていた。午睡止めの合図が聞こえたら、素早く布団を片付けないと怒鳴られ、叱責される。私は担当さんの見回りが来たらまずいと思い、お爺さんに声をかけ...
3.拘置所編

29話「棚の中のもの」

久しぶりに、独りじゃない朝を迎えた。やはり人がいるのはいいものだ。「おはようございます」と声に出すのも久々だった。いつもと変わりない朝食も、一緒に食べると美味しく感じられた。ふと気になったのだが、お爺さんは私物をほとんど持っていなかった。あ...
3.拘置所編

28話「新聞の音だけが響いていた」

緊張感と静けさの中、彼の新聞をめくるバサバサという音だけが部屋に響いていた。どんな人なのだろうか。誰も喋らず、沈黙が気まずくなり、私は彼に話しかけた。「ちょっと聞いていいですか?」彼は新聞を読むのをやめ、私をチラッと見て答えた。「はい」その...
3.拘置所編

27話「再び、雑居へ」

ある日、朝食を済ませ、手紙を書こうと用意をしていると、「おい。25番、移動だ。すぐに荷物をまとめろ」と声をかけられた。急いで荷物をまとめる。施錠が解除され、ドアが開いたので廊下に出た。次はどこへ行くのだろうか。移動はいつも前ぶれもなく突然だ...