3.拘置所編

36話「三年」

運動の日に外に出ると、微かだが子供の頃に感じた春の匂いがした。寒かった拘置所生活も峠を越え、幾分か過ごしやすくなってきていた。今日はいよいよ論告求刑の日だ。 覚悟をしているつもりでいたが、どこか期待している自分もいた。初犯なら執行猶予はまず...
3.拘置所編

35話「小さな見栄と輝く笑顔」

第四回目の公判も終わり、後は求刑と判決を残すところあと二回だ。留置場から拘置所の拘禁生活も五ヶ月が過ぎた。暴力団の人は見栄っ張りが多い気がする。というかほぼ全員だ。普通の人があまり拘らないようなことに異常にこだわる。例えば石鹸箱やタオルや筆...
3.拘置所編

34話「不安を抱えたままの朝」

その朝も、いつもの清々しいクラシックの音楽で目が覚めた。この音楽はいつも、この場所には似つかわしくないと思っていたが、昨日聞いた分類の話が頭から離れない今日は、どこか恨めしく感じられた。今日は第四回目の公判日だ。いつものように手錠をかけられ...
3.拘置所編

33話「覚悟を決めなきゃいけない夜」

ある日の午後、また突然ガチャガチャと施錠が解除された。「25番、弁護士接見」面会室に入ると、くたびれたスーツを着た、いつもの弁護士が座っていた。私が入っても視線は上げず、手帳をめくっている。「こんにちは」と声をかけながら椅子に座ると、「ああ...
3.拘置所編

32話「小さな紙に託されたもの」

いつもと何も変わらない。ゆっくりと時間だけが流れていく部屋。ふと横を見ると、いつものように少し下を向いて座っている井原君がいる。何を考えているのかは分からない。表情も変わらない。けれどその横顔には、彼が生きてきた人生の重みのようなものが滲ん...