5.裏社会編[61話~85話]

75話「始まりの夜」

「お疲れさまでしたー。明日は六時出勤だから、五時半頃迎えにくるね。ゆっくり休んでねー」弘が笑顔で女の子に手を振る。深夜三時過ぎ、最後の女の子を自宅に送り届け、月下美人の初日の営業が終わった。「兄貴、滑り出しは上々っすね。やっぱ兄貴の言った通...
5.裏社会編[61話~85話]

74話「動き出す事務所」

事務所は、駅から歩いてすぐの新築マンションの一室だった。四LDKの部屋で、リビングを待機場所にしている。昼の部のキャストが四人、ソファや椅子に座っていた。オープン初日ということもあってか、みんな少し緊張した様子で静かにしている。テーブルの上...
5.裏社会編[61話~85話]

73話「滝を登る鯉」

朝の光が部屋を優しく包む。窓の外には、まだ柔らかな街の空気が漂っていた。テーブルの上には、由美さんの名刺が置かれている。「BAR 渚…か」駅での印象が自然に思い出され、心の片隅で、近いうちに行くことになるだろうと思った。今日は、刺青の完成を...
5.裏社会編[61話~85話]

72話「山の刑務所」

陣さんのいる刑務所は山の上にある。最寄り駅からでも、車で山道をしばらく上らないといけない場所だ。道は細く、カーブも多い。ほとんど刑務所に行く人しか通らないような道で、両側には木がうっそうと茂っている。面会の日、私は駅で水田由美さんと待ち合わ...
5.裏社会編[61話~85話]

71話「呼ばれた名前」

翌日の午前、水田由美に電話をかけた。数回の呼び出し音のあと、すぐに繋がる。「はい、水田です」落ち着いた声だった。抑揚は少なく、余計な感情もない。面会に乗せて行く日程の話を切り出すと、彼女は社交辞令なのか「ご迷惑になりますので」と一度は断った...
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