5.裏社会編[111話~135話]

116話「美緒の覚悟」

美緒の「ありがとう」が、まだ部屋の中に残っていた。私はコーヒーにもう一度口をつけ、テーブルの上の手帳に目を落とす。「……で、どこから聞こうか?」そう聞くと、美緒は小さく頷き、すぐにページをめくった。「まず、必要な書類なんですが――」迷いのな...
5.裏社会編[111話~135話]

115話「全てを見届けたい」

マンションに戻り、美緒の部屋に入ると、いつもの甘い香りが、さっきよりはっきりと広がっていた。「コーヒー淹れてきますね」そう言って、美緒はキッチンへ向かった。私はソファーに腰を下ろし、バッグからノートとペンを取り出してテーブルに置いた。カリカ...
5.裏社会編[111話~135話]

114話「同じ景色」

少し早いが、私は事務所を出て美緒のマンションへ向かった。何度か走ったことのある、一時間ほどの道のり。これから先、幾度となくこの道を走ることになるのだろうと思った。美緒のマンションに着くと、やはりまだ車は駐車場になかった。私は車を停め、窓を開...
5.裏社会編[111話~135話]

113話「動き出す準備」

翌日、私は朝から事務所で机に向かっていた。届出に必要なものを調べるため、ノートに思いつく限りの項目を書き出していく。だが、調べれば調べるほど曖昧な部分が増えていった。「……やっぱり、直接聞いたほうが早いか」小さく呟き、ペンを置く。警察署に行...
5.裏社会編[111話~135話]

112話「決断」

美緒の部屋を出たあとも、指先に残る温もりが消えなかった。エレベーターに乗り込み、ゆっくりと閉まっていく扉をぼんやりと眺める。さっきまでの甘い空気が、まだ身体に残っている気がした。ポケットの中で携帯が鳴った。画面を見ると、弘からだった。「もし...