目を覚ますと、美緒が隣で眠っていた。
カーテンの隙間から差し込む朝の光が、静かに部屋を照らしている。
私はそっと美緒の髪に触れた。
その気配に気付いたのか、美緒がゆっくりと目を開く。
「……おはよう」
「おはよう」
美緒は小さく微笑むと、私の胸元へ顔を寄せた。
「今日は時のかけらだよね」
「ああ。高梨社長と約束してる」
「忙しくなりそうだね」
「そうだな」
そう答えながらも、不思議と気持ちは落ち着いていた。
しばらく二人で静かな時間を過ごしてから、美緒のマンションを後にした。
昼過ぎ。
私は時のかけらへ向かった。
店へ入ると、高梨社長が笑顔で迎えてくれる。
「お疲れ様です」
「お疲れさまです。ちょうど準備できたところです」
テーブルの上には数多くのアクセサリーが並べられていた。
私は一つひとつ手に取りながら見ていく。
フィリピン人向けの商品。
そして早苗が話していた日本人向けの商品。
どちらもきちんと揃えられていた。
「すごいですね」
思わずそう口にする。
高梨社長は少し笑った。
「フィリピン人向けは、以前と同じ系統の品を揃えました。日本人の女の子が好みそうな品も揃えてきましたが、どうでしょうか?」
私は改めて商品を見渡した。
日本人の女の子が好みそうなデザイン。
派手過ぎず、普段でも使いやすい。
早苗が言っていたイメージに近かった。
「これならいけそうですね」
「それは良かったです」
私は頷きながら商品を仕入れていった。
支払いや書類の手続きを終え、そのまま茉莉花へ向かう。
茉莉花に帰るとリビングは静まり返っていた。
「早苗」
と呼ぶが返事はなく、私の声だけが響く。
私はそのまま二階の部屋へ行き、アクセサリーの入ったバッグをテーブルに置いた。
ソファーに腰を下ろし、携帯を取り出して早苗に連絡する。
すると、少し出ているだけですぐに戻るとのことだった。
私はコートを脱ぎ、寝慣れたベッドへ横になる。
懐かしいような感触。
そして、ほのかに残る早苗の匂い。
安心するようなその匂いに包まれているうちに、いつの間にか眠りに落ちていた。
どれくらい時間が経ったのか分からない。
優しく頬を撫でる手の感触で目を覚ます。
目を開けると、早苗の顔が目の前にあった。
「よく寝てたね」
「ああ、寝てしまってた」
早苗は小さく微笑みながら、私の隣へ腰を下ろした。
「あなたと、こうしてるの久しぶり」
「そうだな」
「最近ずっと忙しかったでしょ」
少しだけ寂しそうな笑顔だった。
私は何も言わず、早苗の髪をそっと撫でる。
すると早苗は安心したように目を細めた。
「だから今日は少しだけ独り占めしたい」
そう言って私の胸元へ額を預ける。
その仕草が愛おしくて、私は自然と早苗を抱き寄せた。
しばらくそのまま寄り添っていたあと、早苗が顔を上げる。
潤んだ瞳が私を見つめていた。
早苗は私の顔を両手で包み込み、そっと唇を重ねる。
柔らかな感触。
久しぶりに触れ合う温もりだった。
唇が離れると、早苗は少し照れたように笑った。
私はその背中へ腕を回し、もう一度引き寄せる。
そして再び唇を重ねた。
今度は先ほどよりも長く。
早苗は小さく身体を震わせ、私の背中へ回した指に力を込める。
言葉はいらなかった。
互いの温もりを確かめるように、ただ静かに抱き合う。
部屋には二人の静かな時間だけが流れていた。

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