朝、いつものように美緒に優しく肩を揺すられて目を覚ました。
「起きて」
ぼんやりと目を開けると、美緒がベッドの端に座って笑っている。
「また寝癖すごいよ」
そう言いながら、跳ねた髪を手で整えてくれた。
「……ありがとう」
「はい、できた」
私は苦笑しながらベッドを降りた。
リビングに行くと、コーヒーの良い香りが広がっている。
朝食は美緒が買ってきてくれた焼きたてのパンとコーヒーだった。
「美味そうだな」
私は笑って手を合わせた。
「いただきます」
しばらくして、私は昨日のことを思い出していた。
「昨日、リトたちのマンション見てて思ったんだけどさ」
「うん?」
「同じ街で、同じようなフィリピンクラブで働いてても、店が違うだけで待遇って結構違うんだな」
美緒はコーヒーカップを置いた。
「そうなんだ」
「ああ、黒木のタレントのアパートは全然違ったんだよな。何て言うか、少し引っ掛かってさ」
「実際に見ちゃうと考えちゃうよね」
「そうなんだよ」
私は頷いた。
「まあ、俺には分からない事情もあるんだろうけどな」
朝食を終えると、私は高橋社長にメールを送った。
ミッシェルから聞いた話をもとに、黒木のタレントたちが好みそうなアクセサリーを少し多めに仕入れたいこと。
それから、黒木のママに似合いそうなシンプルなアクセサリーも数点欲しいことを伝えた。
すると、すぐに返信が来た。
今日の午後二時頃、時のかけらに行くので良かったら来てください。
私は『お伺いします』と返信した。
午後になり、私は時のかけらへ向かった。
「メールでの黒木のタレントさんたちの雰囲気なら、こういうデザインも喜びそうですね」
高橋社長は並んだアクセサリーを見ながら言った。
「そうですね。黒木のタレントもそんなこと言ってました」
「それなら少し多めに用意しておきましょうか」
「お願いします」
それから、黒木のママに似合いそうなシンプルなアクセサリーも選び、仕入れを終えた。
そして、そのまま茉莉花へ戻った。
二階の部屋に上がると、早苗がコーヒーを淹れてくれた。
早苗は私の隣に座ると、カップを手渡しながら聞く。
「それで、クラブ黒木のママどうだった?」
「思ったよりいい人だったよ」
私はコーヒーを一口飲み、昨日の出来事を話した。
すると早苗は少し驚いた顔をする。
「えっ、黒木のママに気に入られたの?」
「気に入られたかどうかは分からないけど、協力はしてくれてるな」
「すごいよ」
早苗は感心したように言った。
「黒木のママってやり手で有名なんだけど、あんまり同業者とかと付き合いしないみたいなんだよ」
「そうなのか?」
「うん。昔から評判の人だし、付き合う相手も選ぶって聞くよ。だから協力してくれるなんて珍しいと思う」
私は少し驚いた。
そんな話をしていると、携帯電話が鳴った。
私はコーヒーカップを置いて画面を見る。
そこに表示されていた名前を見て、思わず笑みが浮かんだ。
ミッシェルからだった。

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