223話「また明日」

私は携帯電話を手に取ると通話ボタンを押した。

「もしもし」

「ナオト? ミッシェルだヨ」

「おう。昨日はありがとう」

「ウン。昨日は楽しかったヨ」

少し笑い声が聞こえた。

「それにネ、ママもナオト面白い人だっテ言ってたヨ」

「面白い人?」

「ウン。アクセサリーの話してる時、すごく楽しそうだったっテ」

「そうか。悪く思われてなくて良かったよ」

「大丈夫ヨ。ママ、明日も会うの楽しみにしてるヨ」

そして、ミッシェルは嬉しそうな声で続けた。

「明日から練習始まるヨ」

「そうか」

「それでネ、ママに連絡が終わる時間にナオトがアクセサリーの販売に来てもいいか聞いたヨ」

「へぇ」

「そしたら、ママが明日は私も店に行くしアクセサリーも見たいから来てもOKだっテ!」

「そうか。ありがとうな」

「ウン!」

ミッシェルの弾んだ声から、本人も喜んでいるのが伝わってきた。

「それで、練習は何時くらいに終わるんだ?」

「三時くらいかナ」

「分かった。そのくらいの時間に店に行くよ」

「ウン! タレントのみんなも喜ぶと思うヨ」

「それは嬉しいな」

「ママも楽しみにしてるヨ」

「それと、ママにもよろしく言っといて」

「分かったヨ。また明日ネ」

「おう。また明日な」

電話を切ると、向かいに座っていた早苗が興味津々といった顔でこちらを見ていた。

「リトから?」

「いや、ミッシェル」

「ミッシェル?」

「昨日話したクラブ黒木のタレントだよ」

「へぇ」

早苗は少し身を乗り出した。

「仲良くなったんだ?」

「まあな。向こうからいろいろ協力してくれてるんだ」

「昨日会ったばかりなのに?」

「俺も驚いてるよ」

「すごいね」

早苗は感心したように笑った。

「しかも黒木のママ公認なんでしょ?」

「まあ、そういうことになるな」

「珍しいじゃん。黒木のママって付き合う相手選ぶって聞くし」

「そんなに有名なんだな」

「うん。だから、あなた気に入られてるんじゃない?」

「それはどうだろうな」

私は苦笑した。

「明日から向こうも練習が始まるらしい。それが終わる頃にアクセサリーの販売に行くことになった」

「順調だね」

「そうだな」

すると早苗はニヤッと笑った。

「で、ミッシェルってどんな子?」

「どんな子って?」

「可愛い?」

「いきなり何言ってるんだよ」

「いいじゃん。気になるんだもん」

私は思わず笑った。

「明るい子だよ。よく笑うし、気も利く」

「へぇ」

早苗は面白そうに頷く。

「写真とかないの?」

「ないよ」

「ふーん」

早苗は少し残念そうに笑った。

「まあ、明日会うんでしょ? また話聞かせてよ」

「分かったよ」

私はコーヒーカップを手に取った。

人との縁っていうのは、不思議なものだ。

昨日知り合ったばかりのミッシェルと、こうしてまた明日の約束をしている。

私は冷めかけたコーヒーを一口飲んだ。

明日もまた、忙しくなりそうだった。

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