132話「縮まる距離」

あのあとも、気づけばしばらく四人で話をしていた。

特別な話をしたわけじゃない。

それでも、こういう時間があるだけで、少しずつ距離は縮まっていく。

食事がひと段落して、自然と片付けが始まる。

「里奈さん、それ取ってもらっていいですか」

「はーい」と返しながら、里奈ちゃんが食器をキッチンに運ぶ。

綾さんはキッチンに立ち、食器などを洗いはじめた。

綾さんと里奈ちゃんの笑い声と、水の音がカウンター越しに聞こえてくる。

早苗がテーブルを拭きながら、

「どうだった?」

小さな声でそう聞かれて、少しだけ考える。

「いいと思う」

短くそう答えると、早苗はそれ以上何も言わず、軽く頷いた。

「もしよければ、明日からの流れだけ少し確認してもいいですか?」

片付けを終えた綾さんが、カウンター越しに言った。

「そうだな、軽くやるか」

私は早苗に目を向けると、「うん」と頷く。

「作戦会議だね!コーヒー淹れるから、綾さんは座ってて」

里奈ちゃんはそう言って、コーヒーを淹れはじめた。

三人でテーブルを囲んで座り、自然と話は仕事のほうに移っていく。

「前の店に、まだ次の仕事先が決まってない女の子がいるんです。

それで……言い方は悪いんですけど、仕事ができる子に声をかけようと思っていて」

綾さんは早苗を見て話した。

「本当に?それ助かる!」

「やったね!さすが綾さん!」

里奈ちゃんがコーヒーをテーブルに置きながら、話に加わる。

綾さんはやわらかく笑った。

「でも、茉莉花が動くまでまだ少し期間がありますよね。

お金が必要な子もいると思うので……」

三人とも少し考え込むように黙ったので、私が提案した。

「それじゃ、茉莉花が稼働するまでの間、月下美人で働いてもらうことにしようか。

腰掛けでも、他店に在籍してしまうとトラブルの元になるからな」

「あっ、それだったら問題ないですね!」

綾さんが少し目を大きくして、私を見る。

「直人くん、ナイスアイデア!」

そう言いながら、里奈ちゃんが私の腕に抱きついた。

それからは、早苗と綾さんを中心に話が進んでいき、気づけば深夜近くになっていた。

どこか現実味を帯びてきたその光景を眺めながら、私は思う。

大丈夫。

さっきよりも、少しだけはっきりと——そう思えた。

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