2026-06

5.再出発編[136話~160話]

143話「甘さのあとで」

扉を開けると、やわらかい甘い香りがふわりと広がった。外の冷たい空気が、そこで途切れる。「ここ、好きなんだよな」そう言って中に入ると、店の奥のほうにある席に目を向けた。ツリーはすぐ目の前にあった。ガラス越しに見える光が、さっきよりも少しだけ近...
5.再出発編[136話~160話]

142話「小さな光」

目を覚ましたとき、部屋はまだ暗く、間接照明の光だけが淡く揺れていた。美緒は私の腕の中にいた。少しだけ体を動かすと、美緒がわずかに身じろぎをする。「……起きてますか?」小さな声がした。「ああ」短く返すと、美緒は少しだけ安心したように微笑んだ。...
5.再出発編[136話~160話]

141話「ふたりのクリスマス」

美緒のマンションのドアを開けると、前の部屋と同じ、甘く落ち着くいい匂いがした。美緒が「おかえり」と、少し照れながら言った。「ああ」そう返し、コートを脱ごうとすると、美緒が手伝ってくれる。コートをハンガーに掛けながら、美緒は「コーヒー淹れます...
5.再出発編[136話~160話]

140話「クリスマスの隙間」

出発ロビーは、旅行客の笑い声でどこか浮ついた空気が漂っている。「楽しんできてね」そう言うと、里奈ちゃんは大きく頷いた。「お土産、楽しみにしててねー!」元気よく笑いながら、早苗の腕を軽く引く。「ちゃんと帰ってくるから」早苗はそう言って、小さく...
5.再出発編[136話~160話]

139話「受け取ったもの」

恵美に連絡を入れると、自宅にいるとのことだった。月に一度の売上報告に行くため、バッグに売上と書類を詰め、恵美のマンションへ向かった。玄関のドアを開けると、男物の革靴が目に入った。リビングの方から、恵美と男の話し声が聞こえる。声をかけるか一瞬...