5.裏社会編[86話~110話]

96話「混ざらないもの」

深夜に弘から電話があった日以降、私は“裏の顔”というものを考えるようになった。表の顔は、「LINK CORPORATION 村上直人」だ。だが、明確な裏の顔というものはない。強いて言うなら、恵美の経営する月下美人での店長、あるいは責任者とい...
5.裏社会編[86話~110話]

95話「掌の上」

「電話鳴ってるわよ」恵美が気怠そうな声で、私の胸を手でゆする。昨日の夜、恵美のマンションでそのまま寝てしまっていた。私の腕を枕にして寝ている恵美から、そっと腕を外して起き上がり、寝ぼけ眼で電話を見る。弘からだった。「どうした?」そう聞きなが...
5.裏社会編[86話~110話]

94話「これでいいんだ」

朝、目が覚めると早苗はすでに起きていた。キッチンからコーヒーの匂いがする。いつもの朝だった。「おはよう、起きてる?コーヒー淹れたよ」早苗が部屋に入ってきて私の枕元に座った。「おはよう」私は目を閉じたまま言った。「ねぇ、今日は何時頃出かけるの...
5.裏社会編[86話~110話]

93話「都合のいい関係」

弘に恵美のことを明かした。すべてを話したわけじゃない。自分に都合がいいところだけだ。仕事の関係で明かさないといけないのも事実だが、弘を使い勝手よくするための口実でもあった。弘は私と恵美の関係を察したようだが、そのことは聞いてこなかった。だか...
5.裏社会編[86話~110話]

92話「慣れていく現場」

「兄貴、俺は兄貴の指示通りにすればいいんすよね」弘はそう言い、視線を上に向けながら考えている。「うん、昨日話した通りだ。お前は俺が指示したことをやればいい」「わかりました、了解っす」弘は少し安心したのか、私を見てにっこりと笑った。江崎さんの...