5.裏社会編[61話~85話]

5.裏社会編[61話~85話]

70話「他愛ない時間」

「兄貴、姐さんご馳走様でした!」弘は車が動き出すまで、笑顔で手を振っていた。車の中は、さっきまでの焼肉の喧騒が嘘みたいに静かだった。窓の外を流れる街灯の光が、ぼんやりと揺れている。「弘君って、ほんと面白いよね」早苗がくすっと笑う。「あいつは...
5.裏社会編[61話~85話]

69話「報せ」

「弘君、遅いね」「何やってんだ、あいつは」今日は早苗と弘の顔合わせも兼ねての食事会の日だ。弘に何が食べたいと聞いたら、久しぶりに肉食べたいと言うのでちょっと奮発して焼肉にした。店内は、店員の威勢のいい声や客の笑い声で賑わっている。早苗が「あ...
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68話「放っておけない男」

エンジンをかけると、弘は嬉しそうにシートにもたれた。「うわ、マジで助手席っすね。なんかあの頃に戻った感じしますね」大げさに笑うが、その目は真っ直ぐ前を見ている。昔と同じ場所。けれど、これから走る道は、あの頃とは違う。私は弘に車で待つように言...
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67話「兄貴と呼ぶ男」

「あっ!兄貴!兄貴じゃないですかー!」背後から響いた声に振り返ると、手を振りながら駆け寄ってくる男がいた。色落ちしたデニムに派手なシャツ。無造作な髪。相変わらずだ。「弘……」「うわ、マジで兄貴だ。何してんすかこんなとこで。俺、最初見間違いか...
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66話「姐さんの背中」

最近は、午前中は刺青、午後からは恵美さんとの仕事の準備。それが一日のルーティンのようになっていた。毎日、熱と痛みに付き合う日々。線で描かれていた鯉に鱗が入り、目が彫られ、色が差されていく。日を追うごとに輪郭は厚みを持ち、やがてリアルな真鯉へ...