5.再出発編[136話~160話]

5.再出発編[136話~160話]

145話「リトという男」

歌が終わり、ざわめきが少しずつ戻ってくる。グラスの触れ合う音と、誰かの笑い声、そして聞き慣れない言葉。さっきまでの静けさが、ゆっくりとほどけていく。「失礼します」低い声がして、視界の端に白が入る。顔を上げると、さっきまでステージに立っていた...
5.再出発編[136話~160話]

144話「聖夜に、目が合う」

駐車場を出ると、飲み屋街の空気はどこかいつもより浮ついていた。クリスマスの夜特有の、軽いざわめき。その中で、弘はやけに機嫌がよかった。「いやー兄貴、良かったっす、ほんと」笑いながら、ポケットからチケットを取り出して見せる。「大介のやつ彼女と...
5.再出発編[136話~160話]

143話「甘さのあとで」

扉を開けると、やわらかい甘い香りがふわりと広がった。外の冷たい空気が、そこで途切れる。「ここ、好きなんだよな」そう言って中に入ると、店の奥のほうにある席に目を向けた。ツリーはすぐ目の前にあった。ガラス越しに見える光が、さっきよりも少しだけ近...
5.再出発編[136話~160話]

142話「小さな光」

目を覚ましたとき、部屋はまだ暗く、間接照明の光だけが淡く揺れていた。美緒は私の腕の中にいた。少しだけ体を動かすと、美緒がわずかに身じろぎをする。「……起きてますか?」小さな声がした。「ああ」短く返すと、美緒は少しだけ安心したように微笑んだ。...
5.再出発編[136話~160話]

141話「ふたりのクリスマス」

美緒のマンションのドアを開けると、前の部屋と同じ、甘く落ち着くいい匂いがした。美緒が「おかえり」と、少し照れながら言った。「ああ」そう返し、コートを脱ごうとすると、美緒が手伝ってくれる。コートをハンガーに掛けながら、美緒は「コーヒー淹れます...