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5.裏社会編[61話~85話]

66話「姐さんの背中」

最近は、午前中は刺青、午後からは恵美さんとの仕事の準備。それが一日のルーティンのようになっていた。毎日、熱と痛みに付き合う日々。線で描かれていた鯉に鱗が入り、目が彫られ、色が差されていく。日を追うごとに輪郭は厚みを持ち、やがてリアルな真鯉へ...
5.裏社会編[61話~85話]

65話「鏡の中の鯉」

マンションのドアを開けると、いつもの匂いがした。背中はまだ熱を持っている。シャツが擦れるたび、じんわりとした痛みが遅れて追いついてくる。「おかえり」早苗がキッチンから顔を出した。いつもと同じ声だった。靴を脱いで部屋に上がる。ソファに腰を下ろ...
5.裏社会編[61話~85話]

64話「戻れないと思った日」

早苗を迎えに行く途中、恵美さんに連絡を入れた。恵美さんはすぐに電話に出た。「どうしたの? 今、あなたに連絡しようと思ってたの」「あのう、この前言ってた刺青の件ですが、お願いしようと思って」少し沈黙が流れ、恵美さんの息遣いだけが聞こえてきた。...
5.裏社会編[61話~85話]

63話「軽かったあの頃」

マンションに戻ると、早苗がキッチンからひょこっと顔を出した。「おかえりー、早かったね。コーヒー淹れるね」私はソファーに腰を下ろした。そして、封筒をテーブルに置いた。「これ」早苗は近づいてきて、封筒を見た瞬間に目を丸くする。「え、ちょっと待っ...
5.裏社会編[61話~85話]

62話「五百万の重さ」

早苗に話した日から、自分の中で何かが変わった気がしていた。境界線の上を彷徨うのではなく、もう戻らない場所に足を置いた——そんな感覚だった。早苗の「あなたについていく。あなたと一緒に生きていく」という言葉が、ずっと頭に残っている。何かが劇的に...