私は美緒に、今から行くと連絡した。
美緒のマンションに向かうときは、いつも近道になる有料道路を使う。
その道路は山を縫うように走っていて、ついこの間まで緑一色だった景色が、今は緑、黄色、赤と山の表情を変え、季節はもう初冬の雰囲気だった。
マンションに着き車を停めると、美緒がエントランスに立って手を振っていた。
「どこか出かけてたのか?」
「ベランダから直人さんの車が入ってくるのが見えたから」
そう言って、美緒は微笑んだ。
部屋に入ると、いつもと同じ甘く落ち着く匂いがした。
「コーヒー淹れますね」
美緒はそう言ってキッチンに向かった。
私はソファーに背をあずける。
カリカリカリと豆を挽く心地良い音が聞こえ、音が止むとコーヒーの香りがふわりと漂ってきた。
甘く落ち着く匂いにその香りが混じり、部屋の空気が柔らかくなるのを感じた。
美緒がマグカップをテーブルに置き、私の隣に座る。
私はコーヒーを一口飲んだ。
「うん、美味い」
美緒は満足そうに微笑んだ。
そのとき、テーブルの上にある美緒の携帯が鳴った。
美緒は携帯を手に取り画面を見ると、
「藤本さんからです。出ますね」
そう言って私に目を向けた。
「はい。お世話になってます、白石です」
美緒は姿勢を正し、少し高めのトーンで電話に出た。
「はい……分かりました。……はい。
で、いつまでに……はい。その条件でしたら問題ないと思います。はい、それではまた明日ご連絡します。失礼します」
明るく落ち着いた声で話す美緒の横顔を見ながら、会社のOLみたいだなと思った。
電話を終えると、美緒は私の方を向いた。
「エンジェルタッチの女の子が三十万借りたいとのことで、金利は藤本さんと同じで、保証人は藤本さんだそうです」
そう言いながらバッグから手帳を取り出し、書き込んでいく。
「分かった。藤本が保証人なら大丈夫だ」
「それじゃ明日、連絡しておきますね」
美緒は手帳を閉じて言った。
「あっ、ホームページほぼ完成しましたよ」
美緒はノートパソコンを開き、電源を入れて私に見せた。
花水木は白を基調に、淡いピンクや黄色。
茉莉花は白を基調に、淡いピンクと薄い紫。
どちらもどこか品があり、きれいにレイアウトされていた。
「これ全部、美緒一人で作ったんだろ。すごいな、完璧じゃないか」
私はマウスでスクロールしながら言った。
「良かったぁ。気に入ってもらえて、頑張った甲斐がありました!」
美緒は少し声を弾ませた。
「後は料金とか求人の詳細を入力して、女の子の写真などを入れて微調整したらいいと思います」
私はしばらく画面に見入っていた。
「美緒、あとで弘と三人で、料金とか細かいところまで決めようか」
そう言って、私はパソコンから目を離した。
「分かりました。ここで話しますか?」
「そうだな。夜中だったら三十分くらいで来れるし」
「それじゃ、まだ時間あるからのんびりしててください」
美緒はそう言って部屋着を手渡し、キッチンへ向かった。
私は部屋着に着替え、ソファーに横になる。
今日一日のことをぼんやりと振り返っていると、いつの間にか眠りに落ちていた。

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