次の日から、一気にやることが増えた。
まずは、引っ越すことを保護司に報告すること。
引っ越すには、それ相応の理由が必要になる。
私はソファーにもたれ、忙しそうにダンボールに荷物を詰めている早苗と里奈ちゃんを眺めながら、その理由を考えていた。
「どうしたの?」
早苗が手を止めて、私に聞く。
「うん。保護司に報告する引っ越しの理由を考えてた」
「あっ、それ大事だよね」
そう言って、早苗は私の隣に座り、頬杖をついた。
その会話を聞いていた里奈ちゃんが口を挟む。
「それならさ、これから結婚もあるし、子供ができることを考えたら、このマンションじゃ狭いからって言えばいいじゃん」
私と早苗は顔を見合わせた。
「だって、まんざら嘘でもないしねー」
里奈ちゃんはそう言いながら、意味深な目で早苗を見てケラケラ笑った。
「もう、里奈ったら」
早苗は少し顔を赤らめ、照れていた。
「それいいね。ちょっと保護司に連絡してくる」
私は携帯を手に取り、立ち上がった。
保護司に連絡を入れ、引っ越しの件を伝えると、話を聞きたいから来るようにと言われた。
私は早苗に保護司に会ってくると告げ、ジャケットを羽織り、マンションを出た。
保護司は、いつもと変わらず優しい口調だった。
さっき里奈ちゃんが言ったことを、そのまま引っ越しの理由として伝える。
保護司は頷きながら言った。
「うん、そういうことだったんだね。早苗さんはしっかりしてるし、彼女と一緒なら私も安心だよ。観察所には私から説明しておくから大丈夫。この調子で頑張りなさい」
「はい」
私はそう返事をして軽く頭を下げ、その場を後にした。
通ったと直感した。
車に乗り込み、早苗に連絡を入れて引っ越しの状況を聞く。
早苗は、すでに茉莉花の事務所に向かっていた。
里奈ちゃんの知り合いがトラックで手伝いに来ていて、大きな荷物を運んでいる途中だと言う。
私はいなくても大丈夫とのことだったので、保護司の件がうまくいったことだけを伝えた。
シートにもたれ、頭の中を整理する。
茉莉花と花水木、どちらも準備は順調に進んでいる。
だが、オープンまでに女の子を集めることが、最大の課題だった。
女の子を集めるには、給料や待遇を決めなければならない。
そしてそれは、客の料金にも直結する。
早苗と里奈ちゃんには、女の子として働いた経験がない。
だが、美緒にはある。
店側では気づけないことも、女の子の視点なら見えるはずだ。
実際に店を回している弘と私。
そして、女の子として店を見てきた美緒。
三人で話すタイミングだと思った。
私は携帯を取り出し弘に連絡を入れ今夜、美緒も交えて三人で花水木について話すことを伝えた。
エンジンをかけ車を出した。
ここで決めることが、この先を全部左右する。

コメント