tom

5.裏社会編[61話~85話]

62話「五百万の重さ」

早苗に話した日から、自分の中で何かが変わった気がしていた。境界線の上を彷徨うのではなく、もう戻らない場所に足を置いた——そんな感覚だった。早苗の「あなたについていく。あなたと一緒に生きていく」という言葉が、ずっと頭に残っている。何かが劇的に...
5.裏社会編[61話~85話]

61話「離さない手」

「話がある」そう言った自分の声が、思っていたよりも冷静だった。喉が震えると思っていたのに、不思議なくらい落ち着いていた。早苗はすぐにこちらを見た。驚きも戸惑いもなく、ただ静かに。その目を見た瞬間。ずっと言わずにいられたことが、もう隠せないと...
4.社会復帰編

60話「戻る道を閉じた日」

早苗に夕方には帰ると告げ、マンションを出た。恵美さんに連絡すると、自宅に来るようにと言われ、そのまま彼女のマンションへ向かった。インターホンを押すと「鍵は開いてるから入ってきて」と声がする。ドアを開けた瞬間、シャンプーや入浴剤の甘い香りが漂...
4.社会復帰編

59話「変わり始めた朝」

朝目覚めると、早苗はもうベッドにいなかった。昼前に差し掛かろうかという時間だったが、リビングに行くとコーヒーの香りが漂っている。コーヒーメーカーには、淹れたばかりのコーヒーがまだ湯気を立てていた。マグカップに注ぎ、ソファに腰を下ろす。今日は...
4.社会復帰編

58話「伍百萬圓」

江崎さんの店を出て、佐藤さんに連絡を入れ報告した。佐藤さんは少し驚いていたが、「時間があるときに来てくれないか」と言った。私はすぐに行ったほうがよい気がして、「今日伺います」と伝えた。車の中で、私は早苗が出てくるのを待っていた。ネオンに照ら...