58話「伍百萬圓」

江崎さんの店を出て、佐藤さんに連絡を入れ報告した。

佐藤さんは少し驚いていたが、

「時間があるときに来てくれないか」

と言った。

私はすぐに行ったほうがよい気がして、

「今日伺います」と伝えた。

車の中で、私は早苗が出てくるのを待っていた。

ネオンに照らされた飲屋街の雑多な喧騒。

少し緊張しながらも、今日の江崎さんの件を思い返す。

やがて早苗が店の扉を開き、こちらに向かって歩いてきた。

「お待たせー!」

その声に、少し肩の力が抜ける。

早苗は車に乗るとすぐに「どうだった?」と身を乗り出して聞いてきた。

「江崎さんに会ってきたよ」

早苗は一瞬固まったが、小さく息をついた。

「危なくなかった?」

「うん、その件で今から佐藤さんに会いに行くことになった」

「えっ、一人で?」と上目遣いで私を見ている。

「一緒に行く?」

「うん!行きたい!」と目を輝かせた。

運転しながら、胸の奥に残る裏社会の空気を感じる。

早苗は真夜中のドライブにご機嫌だ。

私は江崎さんの店での出来事や会話の内容を話すと、早苗は興味津々で聞いていた。

佐藤さんの自宅に着き、早苗には車で待っていてもらうことにした。

江崎さんがこんなに早く見つかるとは思っていなかったらしく、佐藤さんは感心していた。

佐藤さんは私の前に古い茶封筒を差し出し、

「中を確認して」と言った。

封筒の中には黄ばんだ紙が一枚。広げると借用書だった。

金 伍百萬圓——昔の漢数字で書かれ、最後に「江崎澄子」と署名と押印があった。

「ここまできたら、最後までやってみないか」

と佐藤さん。

私は伍百萬圓の文字にドキドキしながらも、

「はい。お願いします」と頭を下げた。

佐藤さんは肩を叩き、「よろしく頼むよ」と微笑んだ。

早苗は車の外に立っていたが、私を見ると駆け寄ってきて言った。

「ねぇ、帰りマックに寄って行こう!」

微笑みながら言うその顔に、少し気持ちがほぐれる。

ドライブスルーで買い食べながら、借用書を預かり最後までやることを話すと、早苗は五百万という金額の大きさに少し心配していた。

私は不安と高揚感が入り混じった気持ちのまま、裏社会に足を踏み入れた実感を噛みしめていた。

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