江崎さんの店を出て、佐藤さんに連絡を入れ報告した。
佐藤さんは少し驚いていたが、
「時間があるときに来てくれないか」
と言った。
私はすぐに行ったほうがよい気がして、
「今日伺います」と伝えた。
車の中で、私は早苗が出てくるのを待っていた。
ネオンに照らされた飲屋街の雑多な喧騒。
少し緊張しながらも、今日の江崎さんの件を思い返す。
やがて早苗が店の扉を開き、こちらに向かって歩いてきた。
「お待たせー!」
その声に、少し肩の力が抜ける。
早苗は車に乗るとすぐに「どうだった?」と身を乗り出して聞いてきた。
「江崎さんに会ってきたよ」
早苗は一瞬固まったが、小さく息をついた。
「危なくなかった?」
「うん、その件で今から佐藤さんに会いに行くことになった」
「えっ、一人で?」と上目遣いで私を見ている。
「一緒に行く?」
「うん!行きたい!」と目を輝かせた。
運転しながら、胸の奥に残る裏社会の空気を感じる。
早苗は真夜中のドライブにご機嫌だ。
私は江崎さんの店での出来事や会話の内容を話すと、早苗は興味津々で聞いていた。
佐藤さんの自宅に着き、早苗には車で待っていてもらうことにした。
江崎さんがこんなに早く見つかるとは思っていなかったらしく、佐藤さんは感心していた。
佐藤さんは私の前に古い茶封筒を差し出し、
「中を確認して」と言った。
封筒の中には黄ばんだ紙が一枚。広げると借用書だった。
金 伍百萬圓——昔の漢数字で書かれ、最後に「江崎澄子」と署名と押印があった。
「ここまできたら、最後までやってみないか」
と佐藤さん。
私は伍百萬圓の文字にドキドキしながらも、
「はい。お願いします」と頭を下げた。
佐藤さんは肩を叩き、「よろしく頼むよ」と微笑んだ。
早苗は車の外に立っていたが、私を見ると駆け寄ってきて言った。
「ねぇ、帰りマックに寄って行こう!」
微笑みながら言うその顔に、少し気持ちがほぐれる。
ドライブスルーで買い食べながら、借用書を預かり最後までやることを話すと、早苗は五百万という金額の大きさに少し心配していた。
私は不安と高揚感が入り混じった気持ちのまま、裏社会に足を踏み入れた実感を噛みしめていた。

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