店内の客は少しずつ増え始めていた。
黒木ママも他のテーブルを回るようになり、先ほどまでのようにゆっくり話をする時間はなくなっていた。
それでも時折こちらに顔を向けては微笑んでくれる。
私はリトとミッシェルと話しながらグラスを傾けていた。
しばらくすると店内の照明が少し落とされる。
「ショータイムだヨ」
リトがそう言った。
ステージへ向かったのはミッシェルだった。
音楽が流れ始める。
私は自然と視線を向けた。
ミッシェルの歌声が店内に響く。
歌が上手い。
それだけではなかった。
少しハスキーな歌声。
どこか人を惹きつけるような歌い方。
気付けば私はグラスを持つ手を止めて聴き入っていた。
店内の客たちも静かに歌声へ耳を傾けている。
曲が終わると大きな拍手が起こった。
ミッシェルは笑顔で手を振りながらステージを降りる。
「どうだった?」
席へ戻ってきたミッシェルが聞く。
「すごく良かったよ」
私がそう答えるとミッシェルは嬉しそうに笑った。
「ありがとうネ」
その後もショータイムは続いた。
途中からはリトがカラオケでステージへ上がる。
慣れた様子でタガログ語の歌を歌い始めると、タレントたちから歓声が上がった。
「リトー!」
「キャー!」
店内は一気に賑やかになる。
私はその様子を見ながら思わず笑った。
リトもすっかり人気者らしい。
気付けば時間はあっという間に過ぎていた。
ショータイムも終わり、店内の客たちも少しずつ帰り始める。
そして気付けば閉店の時間になっていた。
店が終わる頃にリトが言う。
「ナオト、またカレンデリア行く?」
「いいね!行きたい」
ミッシェルも賛成する。
私たちはそのままカレンデリアへ向かった。
店に入り食事を注文する。
リトはビール、私とミッシェルはマンゴージュースでグラスを合わせる。
ひと息ついたところでリトが笑った。
「今日はうまくいって良かったネ」
「本当だな」
私は頷いた。
黒木ママがここまで協力してくれるとは思っていなかった。
「最初は練習の日に販売へ行こうと思うんだ」
私がそう言うとミッシェルが首を傾げた。
「どうして?」
「ママにもアクセサリーを見てもらいたいから」
ミッシェルは納得したように頷く。
「ママ、アクセサリー好きだヨ」
「そうみたいだな」
「こういうのよく付けてるネ」
ミッシェルは自分の耳や腕を指差しながら説明する。
「あと腕時計も好きヨ」
「腕時計?」
「うん。いろいろ持ってるネ」
私は思わず笑った。
黒木ママらしい。
販売へ行く前に聞けて良かったかもしれない。
「練習の日は今度教えるネ」
「助かるよ」
そう言って私はマンゴージュースを一口飲んだ。
次に店へ行く時は、黒木ママにもアクセサリーを見てもらおう。
そんなことを考えながら、私は二人との話を続けた。

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