「タレントのアパートに販売に行ってもいいわよ」
私は思わず言葉を失った。
「本当ですか?」
ようやくそれだけ口にする。
黒木ママは微笑んだ。
「ええ」
「ありがとうございます」
私は頭を下げた。
「でも、どうしてそこまでしてくれるんですか?」
素直な疑問だった。
ママはグラスを手に取る。
「ミッシェルから色々聞いてたからかしらね」
そう言ってミッシェルを見る。
ミッシェルは照れたように笑った。
「この子ね、人を褒めることはあっても、あそこまで熱心に話すのは珍しいのよ」
「ママ~」
「本当のことじゃない」
ママは楽しそうに笑う。
そして私へ視線を戻した。
「だから会ってみようと思ったの」
私は黙って話を聞いた。
「実際に会ってみて納得したわ」
「納得?」
「ええ」
ママは頷いた。
「直感だけどね。この人なら大丈夫そうだなって思ったの」
思わず照れくさくなる。
「ありがとうございます」
ママは話題を変えるように言った。
「ところで、他のお店にも販売に行ってるの?」
「はい」
私は頷いた。
「今はMAHALグループの店に行っています」
「へえ」
ママの視線がリトへ向く。
「こちらはリトです。MAHALでタレントのサポートをしています」
「初めまして」
リトが笑顔で頭を下げた。
「黒木ママ有名だから知ってるヨ」
その言葉にママは笑う。
「悪い噂じゃないといいけど」
席に笑いが広がった。
その後、私は扱っているアクセサリーのことや販売方法について説明した。
ママは興味深そうに聞いている。
「私もアクセサリー好きなのよ」
「そうなんですか」
「ええ。今度見せてもらおうかしら」
そして少し考えるような表情をした。
「月に何日かね、歌やダンスの練習で午後からみんな店に来るの」
私は耳を傾けた。
「練習が終わる時間なら店に来ても大丈夫よ」
「本当ですか?」
「ええ。その時なら私もいるし」
ママは微笑んだ。
「私もアクセサリー、見てみたいもの」
ここまで話が進むとは思っていなかった。
私は驚きながらも頷いた。
「ありがとうございます」
「ただし、一つだけ」
ママの口調が少し真面目になる。
「タレントのアパートは閑静な住宅街の中にあるの」
「はい」
「夜中だから騒いだりしないようにだけ気を付けてね」
「もちろんです」
私はすぐに答えた。
ママは満足そうに頷く。
「それなら大丈夫」
ママはそう言って微笑んだ。

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