216話「この人なら大丈夫」

「タレントのアパートに販売に行ってもいいわよ」

私は思わず言葉を失った。

「本当ですか?」

ようやくそれだけ口にする。

黒木ママは微笑んだ。

「ええ」

「ありがとうございます」

私は頭を下げた。

「でも、どうしてそこまでしてくれるんですか?」

素直な疑問だった。

ママはグラスを手に取る。

「ミッシェルから色々聞いてたからかしらね」

そう言ってミッシェルを見る。

ミッシェルは照れたように笑った。

「この子ね、人を褒めることはあっても、あそこまで熱心に話すのは珍しいのよ」

「ママ~」

「本当のことじゃない」

ママは楽しそうに笑う。

そして私へ視線を戻した。

「だから会ってみようと思ったの」

私は黙って話を聞いた。

「実際に会ってみて納得したわ」

「納得?」

「ええ」

ママは頷いた。

「直感だけどね。この人なら大丈夫そうだなって思ったの」

思わず照れくさくなる。

「ありがとうございます」

ママは話題を変えるように言った。

「ところで、他のお店にも販売に行ってるの?」

「はい」

私は頷いた。

「今はMAHALグループの店に行っています」

「へえ」

ママの視線がリトへ向く。

「こちらはリトです。MAHALでタレントのサポートをしています」

「初めまして」

リトが笑顔で頭を下げた。

「黒木ママ有名だから知ってるヨ」

その言葉にママは笑う。

「悪い噂じゃないといいけど」

席に笑いが広がった。

その後、私は扱っているアクセサリーのことや販売方法について説明した。

ママは興味深そうに聞いている。

「私もアクセサリー好きなのよ」

「そうなんですか」

「ええ。今度見せてもらおうかしら」

そして少し考えるような表情をした。

「月に何日かね、歌やダンスの練習で午後からみんな店に来るの」

私は耳を傾けた。

「練習が終わる時間なら店に来ても大丈夫よ」

「本当ですか?」

「ええ。その時なら私もいるし」

ママは微笑んだ。

「私もアクセサリー、見てみたいもの」

ここまで話が進むとは思っていなかった。

私は驚きながらも頷いた。

「ありがとうございます」

「ただし、一つだけ」

ママの口調が少し真面目になる。

「タレントのアパートは閑静な住宅街の中にあるの」

「はい」

「夜中だから騒いだりしないようにだけ気を付けてね」

「もちろんです」

私はすぐに答えた。

ママは満足そうに頷く。

「それなら大丈夫」

ママはそう言って微笑んだ。

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