しばらく早苗と話したあと。
私は残っていたコーヒーを飲み干した。
部屋の空気も、さっきまでの話も少し落ち着いていた。
その時。
テーブルの上に置いていた携帯が鳴る。
画面を見るとリトだった。
「もしもし」
電話に出ると、すぐにリトの声が聞こえた。
「この前話した◯◯市のお店のタレントのことなんだけどネ」
私は少し考える。
空港に行ったとき話していた店だ。
「うん」
「今日の仕事終わってからアクセサリー見たいって連絡来たんだけど大丈夫かナ?」
その場所は夜中なら車で三十分くらいだ。
「大丈夫」
そう答えると。
「分かった、じゃ仕事終わる前に連絡するネ!」
そう言って電話は切れた。
私は携帯をテーブルへ置く。
「リト?」
早苗が聞いた。
「うん」
私は電話の内容を話すと、早苗が少し驚いた顔をした。
「そんな遠くまで行くようになったんだ」
「そうだな」
改めて思う。
気付けば。
そんな場所からも声が掛かるようになっていた。
少し前までは想像もしなかった。
私は立ち上がる。
「ちょっと花水木に行ってくる」
「うん、いってらっしゃい。気を付けてね」
「うん、分かった」
茉莉花を出ると、外は暗くなり始めていた。
車へ乗り込みエンジンを掛ける。
向かう先は美緒のマンションだった。
マンションへ着くと、美緒が出迎えてくれた。
部屋にはいつもの甘く良い匂いが広がっている。
部屋へ入り、私はリトからの電話の話をする。
「今日の夜?」
美緒が少し驚く。
「うん」
「三人で行くの?」
「うん、初めての場所だしな」
すると、美緒が少し嬉しそうに笑った。
「すごいね」
「何が?」
私が聞くと。
「アクセサリー販売」
美緒が続ける。
「また広がったんだなって」
私は少し笑う。
確かに、少しずつだけど。
前へ進んでいた。
私は時計を見る。
夜までは、まだ少し時間があった。

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