車の音が聞こえ、私は窓へ視線を向ける。
「帰ってきたみたい」
早苗が言った。
少しすると、玄関の扉が開く音がする。
下から声が聞こえた。
「ただいまー」
綾さんだった。
早苗が立ち上がる。
「ちょっと聞いてくるね」
「面接?」
私が聞くと。
「うん。それと優良店会の話も」
そう言って部屋を出て行った。
静かになった部屋で私はコーヒーを飲む。
窓から差し込む光。
下からは時々話し声が聞こえるが、何を話しているのかまでは聞こえない。
私はぼんやりと天井を見る。
優良店会。
弘から聞いた話。
何となく引っかかっていた。
でも。
何が引っかかるのかは自分でも分からなかった。
しばらくすると、階段を上がる音が聞こえる。
私は自然とドアへ視線を向けた。
ドアが開く。
「ただいま」
早苗が笑う。
「おかえり」
私も少し笑いながらそう言うと。
早苗が隣へ座った。
「どうだった?」
私が聞くと、早苗が少し嬉しそうに笑った。
「面接ね。良い子だったみたい」
「そうか」
「綾さんも結構気に入ってた」
私は少し安心する。
ホームページの求人から応募が来て面接をした。
少しずつだけど。
確かに前へ進んでいる気がした。
私はコーヒーを飲む。
「それで?」
そう聞くと、早苗が少し考える。
「優良店会って話したらね」
私は黙って聞く。
「綾さん、少し考えてた」
「考えてた?」
「うん」
早苗が頷く。
「最近、その名前聞いた事あるって」
「知ってた訳じゃないんだな」
「うん」
早苗が続ける。
「でも最近たまに聞くらしい」
部屋が少し静かになり、私はカップを見る。
優良店会。
弘も言っていた。
そして。
綾さんも最近聞いたと言う。
それだけだった。
ただ。
何故か少しだけ引っかかった。
下のリビングでは。
今日も金魚達が静かに泳いでいた。

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