202話「引っかかる名前」

車の音が聞こえ、私は窓へ視線を向ける。

「帰ってきたみたい」

早苗が言った。

少しすると、玄関の扉が開く音がする。

下から声が聞こえた。

「ただいまー」

綾さんだった。

早苗が立ち上がる。

「ちょっと聞いてくるね」

「面接?」

私が聞くと。

「うん。それと優良店会の話も」

そう言って部屋を出て行った。

静かになった部屋で私はコーヒーを飲む。

窓から差し込む光。

下からは時々話し声が聞こえるが、何を話しているのかまでは聞こえない。

私はぼんやりと天井を見る。

優良店会。

弘から聞いた話。

何となく引っかかっていた。

でも。

何が引っかかるのかは自分でも分からなかった。

しばらくすると、階段を上がる音が聞こえる。

私は自然とドアへ視線を向けた。

ドアが開く。

「ただいま」

早苗が笑う。

「おかえり」

私も少し笑いながらそう言うと。

早苗が隣へ座った。

「どうだった?」

私が聞くと、早苗が少し嬉しそうに笑った。

「面接ね。良い子だったみたい」

「そうか」

「綾さんも結構気に入ってた」

私は少し安心する。

ホームページの求人から応募が来て面接をした。

少しずつだけど。

確かに前へ進んでいる気がした。

私はコーヒーを飲む。

「それで?」

そう聞くと、早苗が少し考える。

「優良店会って話したらね」

私は黙って聞く。

「綾さん、少し考えてた」

「考えてた?」

「うん」

早苗が頷く。

「最近、その名前聞いた事あるって」

「知ってた訳じゃないんだな」

「うん」

早苗が続ける。

「でも最近たまに聞くらしい」

部屋が少し静かになり、私はカップを見る。

優良店会。

弘も言っていた。

そして。

綾さんも最近聞いたと言う。

それだけだった。

ただ。

何故か少しだけ引っかかった。

下のリビングでは。

今日も金魚達が静かに泳いでいた。

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