211話「警戒」

私はコーヒーを一口飲んだ。

「黒岩が絡んでるなら、きっと碌な話じゃないだろうな」

そう言うと弘は苦笑した。

「俺もそう思うっす」

そして少し声を落とす。

「半ば強制的に加入させられた店の話なんすけどね」

私は黙って続きを待った。

「女の子の在籍のトラブルを仕掛けられたり、色々と難癖をつけられたりしてるみたいなんすよ」

私は眉をひそめた。

「なるほどな」

「もちろん全部が本当かどうかは分からないっす」

弘はそう前置きする。

「でも、同じような話を何人かから聞いたんで、まったくのデタラメでもなさそうっす」

私は腕を組んだ。

もしそれが本当なら、優良店会という名前とは随分とかけ離れた話だ。

弘はコーヒーへ手を伸ばしながら続ける。

「去年、兄貴とトラブった時も似たようなもんだったじゃないっすか」

私は弘を見る。

「あの時か」

「そうっす」

弘は頷いた。

「あれだって、ほぼ難癖みたいなもんだったと思うんすよ」

私は苦笑した。

確かに言われてみればそうだ。

結果的には黒岩と直接話をして話は収まった。

だが、最初から最後まで納得できる話だったかと言われれば別だった。

「あの時は運良く収まっただけかもしれないな」

私は呟いた。

弘も真剣な表情で頷く。

「俺もそう思うっす」

そして少し間を置いてから続けた。

「あいつ、絶対に根に持ってますよ」

私は窓の外へ目を向けた。

黒岩。

あの男なら十分にありえる。

もし再びトラブルになれば、今度は前回のようにはいかないかもしれない。

そんな考えが頭をよぎった。

私は再び弘へ視線を戻した。

「弘」

「はい」

「もう一つ気になる話がある」

私は声を落とした。

「ラブステーションの黒岩だがな」

弘の表情が少し引き締まる。

「あいつの親族に柴田組の宮本という人間がいる」

「そうなんすか」

「ああ」

私は頷いた。

「経営にも関わっているらしい」

弘は黙って続きを待つ。

私は真剣な表情で言った。

「だから余計な事には首を突っ込むな」

弘は真剣な顔で頷いた。

「分かりました」

私はコーヒーを口へ運ぶ。

優良店会。

どうやら思っていた以上に厄介な話になりそうだった。

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