2026-05

5.再出発編[86話~110話]

98話「この店で決めたこと」

弘にジルクールで待ってると言って電話をきった。何度か足を運んだことのある店だが、弘は初めてだと言っていた。店の前に立つと、ブルーのネオンで「ジルクール」と書かれた看板が静かに灯っていた。この店に来るのは、いつも決まって深夜だった。最初にこの...
5.再出発編[86話~110話]

97話「吐いた唾」

翌日、部屋にはスパイスの香りが残っていた。昨夜のバターチキンカレーの匂いだ。早苗はいつも通りで、何も変わらない朝だった。だが、私の中だけが少し違っていた。早苗はコーヒーを淹れ、朝食の準備をしている。私はソファーに横になり、天井を見上げながら...
5.再出発編[86話~110話]

96話「混ざらないもの」

深夜に弘から電話があった日以降、私は“裏の顔”というものを考えるようになった。表の顔は、「LINK CORPORATION 村上直人」だ。だが、明確な裏の顔というものはない。強いて言うなら、恵美の経営する月下美人での店長、あるいは責任者とい...
5.再出発編[86話~110話]

95話「掌の上」

「電話鳴ってるわよ」恵美が気怠そうな声で、私の胸を手でゆする。昨日の夜、恵美のマンションでそのまま寝てしまっていた。私の腕を枕にして寝ている恵美から、そっと腕を外して起き上がり、寝ぼけ眼で電話を見る。弘からだった。「どうした?」そう聞きなが...
5.再出発編[86話~110話]

94話「これでいいんだ」

朝、目が覚めると早苗はすでに起きていた。キッチンからコーヒーの匂いがする。いつもの朝だった。「おはよう、起きてる?コーヒー淹れたよ」早苗が部屋に入ってきて私の枕元に座った。「おはよう」私は目を閉じたまま言った。「ねぇ、今日は何時頃出かけるの...