翌朝、目を覚ますと美緒が私の腕の中で小さな寝息をたて眠っていた。
静かな部屋の中で、昨日のことを思い出す。
許可証。花水木。茉莉花。
ここから始まる。
そんなことを考えていると、美緒がゆっくり目を開けた。
「おはよ」
少し眠そうに笑う。
「おはよう」
美緒が私の胸に顔をうずめてくる。
「なんか変な感じ」
「またそれか?」
そう言うと、美緒が少し笑った。
「昨日も言ったけど」
少し間が空く。
「本当に始まった感じ」
私は小さく笑った。
「今日から忙しくなるな」
美緒が頷く。
「うん」
少しだけ静かな時間が流れる。
「準備しよっか。コーヒー淹れてくるね」
美緒が起き上がりキッチンへ向かった。
私はベッドに横になったまま、ぼんやりと今日する事を考えているとコーヒーのいい香りが漂ってきた。
「コーヒー淹れたよ」
美緒はそう言いながら、ベッドに座り私の髪を軽く指で撫でて整える。
私がソファーに腰を下ろすと、美緒がカップを手渡しながら言った。
「今日は、昨日話した従業員名簿を作りに花水木に行ってくるね」
警察署で作っておくように言われた従業員名簿。
スタッフ。女の子。免許証のコピーか住民票。
揃えるものは多かった。
「やることいっぱいだね」
美緒が少し笑う。
「始まったばかりだからな」
そう言うと、美緒は頷いた。
「うん。でも楽しい」
午後。
美緒は花水木へ向かった。
それから私は茉莉花へ戻った。
そのまま二階に上がり部屋に入ると、早苗が書類を広げていた。
「ただいま」
早苗が顔を上げた。
「あ、おかえり」
机の上には免許証のコピーや従業員名簿の書類。
「従業員名簿か」
早苗が頷いた。
「早急につくって、必ず事務所に保管しておくように言われたから」
少し笑う。
「免許持ってない子は住民票を出してもらわないといけないからね。思ったより大変」
私もソファーへ座った。
「そうだな」
「今、里奈が免許ない子を市役所まで乗せて行ったりしてるんだよね」
しばらく二人で確認する。
記入漏れがないか。
連絡する相手。
やることはまだ多かった。
ふと携帯を見る。
茉莉花を検索してみる。
すぐに表示された。
続けて花水木も見る。
こちらもちゃんと出てきた。
出てくるのは茉莉花と花水木。
しばらく画面を見る。
同じような店は、どこにも表示されなかった。
「どうしたの?」
早苗が聞いた。
「いや」
少し笑う。
「検索すると出るんだな」
早苗も携帯を見る。
少し驚いた顔をした。
「本当だ、携帯でもちゃんと出てるね」
私は携帯を置く。
「これからは堂々と宣伝出来るな」
早苗が頷いた。
「ネットってどれくらい反響あるんだろう?」
「どうなんだろうな。でも少なくとも見てもらう機会は増えるだろ。これだけの情報を載せれて、月にかかる金も新聞広告に比べたら微々たるもんだし」
「そうだね」
「あとはこのホームページを、どうやって広げていくかだよな」
少し考える。
雑誌。紹介。口コミ。もちろん必要だろう。
けれど、これからは違う。
ネットですぐに見れる。
店のコンセプトや雰囲気も伝えられる。
見つけてもらう。
探してもらう。
それも出来る。
「これからは、集客も求人もネットをメインにしていこう」
早苗が笑った。
「なんか会社っぽいね」
私も少し笑う。
外を見る。
雪は止んでいた。
本当に動き始めていた。

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