美緒は私の腕を抱いたまま離れなかった。
肩が触れ、腕も触れる。
少し体を動かすと、また近付いてくる。
私は少し笑った。
「近くないか?」
「今日はいいの」
美緒が小さくそう言いながら。
自然に私の腕を抱いた。
ソファへ体を預ける。
慌ただしかった一日も、ようやく全部終わった。
部屋には静かな時間だけが流れていた。
「疲れた?」
美緒が聞く。
「少しな」
「私も」
少し間が空く。
美緒がそっと肩へ頭を乗せた。
「……でも」
「ん?」
「楽しかった」
私は隣を見る。
美緒は少し照れたように笑った。
「空港も」
「うん」
「三人も」
「そうだな」
美緒は私の腕へ頬を寄せる。
しばらくそのままだった。
すると、今度は指を絡めてきた。
「今日は頑張った」
「頑張ってたな」
そう言うと。
美緒が少し嬉しそうに笑う。
少しして美緒が立ち上がった。
「お風呂入ろ?」
そう言いながら私の手を取る。
「そうだな」
立ち上がろうとすると、美緒は手を離さなかった。
キャンドルの灯りが揺れる浴室へ入ると、暖かい湯気と甘い香りに包まれる。
湯船に浸かると、ようやく体から力が抜ける。
美緒が自然に身体を少し預けてくる。
肌が触れ合うたび、少しずつ力が抜けていく。
私は後ろから、そっと腕を回した。
美緒の身体から少し力が抜ける。
そのまま静かに身を委ねてきた。
少しすると。
美緒は私の腕を軽く引き寄せ、首に絡めもっと近付いてくる。
「近いな」
私が笑う。
「今日はいいの」
また同じ事を言った。
私は少し笑う。
「今日は甘えたい日か?」
美緒は少し考え、小さく頷いた。
湯船の中。
美緒は私の腕をずっと離さなかった。
風呂を出る頃には、二人とも少し眠くなっていた。
ベッドへ入り横になると美緒がすぐ近付いてきた。
腕を抱き、体を寄せる。
横を向くと目の前に美緒の顔。
「近い」
私が笑う。
「……うん」
美緒も少し笑った。
美緒が小さく言う。
「今日は」
「ん?」
「いっぱい頑張ったから」
私は頷く。
「うん」
美緒は少しだけ私を見る。
それから。
また少し近付いた。
「今日はいっぱいくっつく」
私は少し笑った。
「そうか」
「うん」
満足そうだった。
少しすると、今度は私の胸へ顔を埋める。
腕も離さない。
「美緒」
「ん?」
「離れないな」
美緒は少し笑った。
「今日は離れない」
小さな声だった。
私はそっと肩を抱く。
美緒は静かに目を閉じた。
長い一日が終わる。
今日はもう。
何も考えなくていい。
そんな気がした。

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