121話「まんざら嘘でもない未来」

次の日から、一気にやることが増えた。

まずは、引っ越すことを保護司に報告すること。

引っ越すには、それ相応の理由が必要になる。

私はソファーにもたれ、忙しそうにダンボールに荷物を詰めている早苗と里奈ちゃんを眺めながら、その理由を考えていた。

「どうしたの?」

早苗が手を止めて、私に聞く。

「うん。保護司に報告する引っ越しの理由を考えてた」

「あっ、それ大事だよね」

そう言って、早苗は私の隣に座り、頬杖をついた。

その会話を聞いていた里奈ちゃんが口を挟む。

「それならさ、これから結婚もあるし、子供ができることを考えたら、このマンションじゃ狭いからって言えばいいじゃん」

私と早苗は顔を見合わせた。

「だって、まんざら嘘でもないしねー」

里奈ちゃんはそう言いながら、意味深な目で早苗を見てケラケラ笑った。

「もう、里奈ったら」

早苗は少し顔を赤らめ、照れていた。

「それいいね。ちょっと保護司に連絡してくる」

私は携帯を手に取り、立ち上がった。

保護司に連絡を入れ、引っ越しの件を伝えると、話を聞きたいから来るようにと言われた。

私は早苗に保護司に会ってくると告げ、ジャケットを羽織り、マンションを出た。

保護司は、いつもと変わらず優しい口調だった。

さっき里奈ちゃんが言ったことを、そのまま引っ越しの理由として伝える。

保護司は頷きながら言った。

「うん、そういうことだったんだね。早苗さんはしっかりしてるし、彼女と一緒なら私も安心だよ。観察所には私から説明しておくから大丈夫。この調子で頑張りなさい」

「はい」

私はそう返事をして軽く頭を下げ、その場を後にした。

通ったと直感した。

車に乗り込み、早苗に連絡を入れて引っ越しの状況を聞く。

早苗は、すでに茉莉花の事務所に向かっていた。

里奈ちゃんの知り合いがトラックで手伝いに来ていて、大きな荷物を運んでいる途中だと言う。

私はいなくても大丈夫とのことだったので、保護司の件がうまくいったことだけを伝えた。

シートにもたれ、頭の中を整理する。

茉莉花と花水木、どちらも準備は順調に進んでいる。

だが、オープンまでに女の子を集めることが、最大の課題だった。

女の子を集めるには、給料や待遇を決めなければならない。

そしてそれは、客の料金にも直結する。

早苗と里奈ちゃんには、女の子として働いた経験がない。

だが、美緒にはある。

店側では気づけないことも、女の子の視点なら見えるはずだ。

実際に店を回している弘と私。

そして、女の子として店を見てきた美緒。

三人で話すタイミングだと思った。

私は携帯を取り出し弘に連絡を入れ今夜、美緒も交えて三人で花水木について話すことを伝えた。

エンジンをかけ車を出した。

ここで決めることが、この先を全部左右する。

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