翌日、弘から連絡が入った。
店の営業時間前の早い時間だった。
「兄貴、警察署行ってきたっす」
少しだけ息が上がっているように聞こえた。
「どうだった?」
「江崎さんが言ってた通りです。来年から届出制になるみたいっす」
弘は確信を得た言い方だった。
「生活安全課の人にも確認したっす。今のうちに準備しておいた方がいいって言ってました」
弘なりに、ちゃんと聞いてきたのが分かった。
「分かった」
それだけで十分だった。
電話を切る。
しばらく、そのまま画面を見ていた。
迷いはなかった。
月下美人を、届出することに決めた。
名義は弘にする。
その方が動きやすい。
それと同時に、もう一店舗出すことも決めた。
流れは来ている。
止める理由はなかった。
その日のうちに、早苗に話をした。
届出のこと。
これからのやり方を変えること。
そして、もう一店舗出すつもりでいること。
早苗は黙って聞いていた。
途中で一度も口を挟まなかった。
話し終えると、少しだけ間が空いた。
「もう一店舗出すなら…」
早苗が口を開く。
「私がやる」
迷いのない声だった。
私は早苗を見る。
「早苗が?」
早苗は小さく頷いた。
「うん。あなたと仕事できるから」
それだけ言って、少しだけ視線を落とした。
「それと……」
もう一度、顔を上げる。
「届出も、私の名前で出した方がいいと思う」
「なんでだ?」
そう聞くと、早苗は少しだけ息をついた。
「あなた、執行猶予中でしょ」
視線を外さずに言う。
「表に出ない方がいい」
言い切る声だった。
部屋の空気が、少しだけ静かになる。
私は何も言わず、早苗を見ていた。
「だから、新しい店は私がやる」
その言葉に、迷いはなかった。
流れは、さらに大きくなろうとしていた。

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