230話「フィリピンでも仕事を」

リトは真剣な眼差しで私を見つめた。

「ナオト……」

「ん?」

「私、フィリピンでも仕事がほしいヨ」

突然の言葉に、私は少し驚いた。

「フィリピンで仕事?」

「ウン」

リトは静かに頷く。

「ナオト、Door-to-Doorって知ってる?」

「いや、知らないな」

そう答えると、リトはゆっくりと話し始めた。

「あのね。タレントはフィリピンによくお金を送ってるヨ」

「そうなのか」

「ウン。でも普通に銀行から送ると手数料がすごく高いネ」

「リトも送ってるの?」

私が尋ねると、リトは頷いた。

「ウン。フィリピンから電話があったら送ってるヨ」

家族から連絡があれば、そのたびに送金しているのだろう。

「だからタレントたちも、みんな銀行からは送らないネ」

「じゃあ、そのDoor-to-Doorっていうのは?」

リトはテーブルの上で両手を軽く組んだ。

「例えば、日本人と結婚したフィリピン人がいるネ」

私は黙って続きを聞く。

「その人にお金を預けるヨ。そうすると、すぐにフィリピンの家族に届くようになってるネ」

「なるほど」

私は頷いた。

「銀行を通さないから、手数料も安く済むってことか」

「ウン。だからタレントたちは、その人たちに頼むヨ」

私はコーヒーを一口飲みながら考えた。

確かに、それならフィリピンへ送金する負担はかなり減るだろう。

「それでリトは、そのDoor-to-Doorの仕事がしたいんだな?」

リトは真っ直ぐ私を見つめ、ゆっくりと頷いた。

「ウン」

そして少しだけ微笑む。

「私は日本で仕事があるヨ」

そう言うと、自分の胸にそっと手を当てた。

「MAHALもあるし、今はナオトとアクセサリーの仕事もしてるネ」

私は黙って耳を傾ける。

「でもフィリピンは仕事ないヨ。私の家族もいつも仕事さがしてるヨ」

その言葉には、どこか寂しさが滲んでいた。

「だから私、フィリピンでも仕事がほしいネ」

私はリトの真剣な表情を見つめた。

この相談は、ただ仕事を増やしたいという話ではない。

リトが、自分の将来を見据え、家族のことまで考えた末に出した答えなのだと感じていた。

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