リトは真剣な眼差しで私を見つめた。
「ナオト……」
「ん?」
「私、フィリピンでも仕事がほしいヨ」
突然の言葉に、私は少し驚いた。
「フィリピンで仕事?」
「ウン」
リトは静かに頷く。
「ナオト、Door-to-Doorって知ってる?」
「いや、知らないな」
そう答えると、リトはゆっくりと話し始めた。
「あのね。タレントはフィリピンによくお金を送ってるヨ」
「そうなのか」
「ウン。でも普通に銀行から送ると手数料がすごく高いネ」
「リトも送ってるの?」
私が尋ねると、リトは頷いた。
「ウン。フィリピンから電話があったら送ってるヨ」
家族から連絡があれば、そのたびに送金しているのだろう。
「だからタレントたちも、みんな銀行からは送らないネ」
「じゃあ、そのDoor-to-Doorっていうのは?」
リトはテーブルの上で両手を軽く組んだ。
「例えば、日本人と結婚したフィリピン人がいるネ」
私は黙って続きを聞く。
「その人にお金を預けるヨ。そうすると、すぐにフィリピンの家族に届くようになってるネ」
「なるほど」
私は頷いた。
「銀行を通さないから、手数料も安く済むってことか」
「ウン。だからタレントたちは、その人たちに頼むヨ」
私はコーヒーを一口飲みながら考えた。
確かに、それならフィリピンへ送金する負担はかなり減るだろう。
「それでリトは、そのDoor-to-Doorの仕事がしたいんだな?」
リトは真っ直ぐ私を見つめ、ゆっくりと頷いた。
「ウン」
そして少しだけ微笑む。
「私は日本で仕事があるヨ」
そう言うと、自分の胸にそっと手を当てた。
「MAHALもあるし、今はナオトとアクセサリーの仕事もしてるネ」
私は黙って耳を傾ける。
「でもフィリピンは仕事ないヨ。私の家族もいつも仕事さがしてるヨ」
その言葉には、どこか寂しさが滲んでいた。
「だから私、フィリピンでも仕事がほしいネ」
私はリトの真剣な表情を見つめた。
この相談は、ただ仕事を増やしたいという話ではない。
リトが、自分の将来を見据え、家族のことまで考えた末に出した答えなのだと感じていた。

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