食事を終えた私たちは店の外へ出た。
「またネー!」
「また今度マンションに来てネ!」
メイたちが手を振る。
「またな」
「気を付けて帰ってね」
私と美緒も手を振った。
メイたちが歩いていく後ろ姿を少し見送り、私たちも車へ向かった。
リトをマンションまで送るため車を走らせながら、しばらくは他愛もない話をしていた。
今日の販売のこと。
メイたちのこと。
そして日本とフィリピンの違いのこと。
そんな話で盛り上がっていると。
助手席のリトが不意に私を見た。
「ナオト」
「ん?」
「プロモーターの仕事に興味あるノ?」
突然の質問だった。
私は少し驚く。
「どうしてだ?」
「ナオト真剣な顔で聞いてたからネ」
リトは笑った。
「ああ」
私は苦笑する。
確かに聞いていた。
どうやってタレントが日本へ来るのか。
どうやって店で働くのか。
知らない事ばかりだったからだ。
「いや」
私は首を振る。
「どんな仕組みになってるのか気になっただけだよ」
「ソウ?」
「仕事として考えた事はなかったな」
そう言うと、リトは小さく笑った。
「でも興味は持ったネ?」
「まあな」
私は正直に答えた。
今まで知らなかった世界だ。
タレント。
プロモーター。
芸能界みたいな事務所。
どれも私には縁のない話だった。
だけど実際に話を聞いてみると面白い。
世の中には色々な仕事があるものだと思う。
「ナオト向いてるかもしれないネ」
「そうか?」
「ナオトは優しいし、人の話ちゃんと聞くヨ」
私は思わず笑った。
そんな風に言われたのは初めてだった。
「そういうものかな」
「そういうものネ」
リトは楽しそうに笑った。
そんな話をしているうちに、リトの住むマンションへ到着した。
車を停めると、リトがシートベルトを外す。
「送ってくれてありがとうネ」
「うん、楽しかった。フィリピン料理も美味しかったよ」
「また連絡するネ」
「分かった」
リトは手を振ると車を降りた。
そしてマンションの入口へ向かって歩いていく。
その背中が見えなくなるまで見送ると、私は再び車を走らせた。
助手席では美緒が静かに笑っている。
「何だ?」
私が聞くと、美緒は首を振った。
「別に」
そう言いながらも笑みは消えない。
「絶対何かあるだろ」
「ふふっ」
美緒は窓の外を見た。
「ナオトさん、楽しそうだったなって」
「そうか?」
「うん」
私は少し考える。
確かに面白かった。
今日聞いた話はどれも知らない事ばかりだった。
フィリピンの話。
タレントたちの話。
そしてプロモーターという仕事。
どれも今までの私なら関わる事のなかった世界だ。
「まあ、面白かったな」
正直に答える。
すると美緒は嬉しそうに頷いた。
「良かった」
「何がだ?」
「ナオトさん、最近色んな事に興味持ってるから」
私は思わず苦笑した。
「そうかもしれないな」
昔の私なら気にも留めなかったかもしれない。
だけど今は違う。
知らない事を知るのは案外楽しい。
そんな風に思うようになっていた。
しばらくして美緒のマンションへ到着する。
二人でエレベーターに乗り、部屋へ向かった。
「ただいま」
「おかえり」
誰もいない部屋なのに、自然とそんな言葉が出る。
美緒も小さく笑った。
私は上着を脱ぎ、ソファーに腰を下ろした。
今日の事を思い返す。
フィリピン料理を食べた事。
メイたちと話した事。
そしてリトから聞いたプロモーターの仕事の事。
どれも少し前の私なら関わる事のなかった世界だ。
だけど今は、そういう話を聞くのが面白いと思える。
知らない事を知るのは案外楽しい。
私は小さく息をついた。
世の中には、まだ私の知らない世界がたくさんある。
そんな事を考えながら、私はゆっくりとソファーにもたれた。

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