208話「可愛い日本語」

「冬は寒すぎるヨー!」

メイの言葉に店内は笑い声に包まれた。

「そんなに寒かったのか?」

私が聞くと、メイは大きく頷く。

「寒かったヨ!」

「フィリピンは雪降らないネ」

別のタレントも笑いながら言った。

「私は手が痛くなったヨ」

「それは寒いな」

私が苦笑すると、再び笑いが起きる。

そんな中。

「でもネ」

メイが箸を持ちながら言った。

「日本に来て最初にびっくりしたのはお米だったヨ」

「お米?」

私は首を傾げた。

メイは何度も頷く。

「すごく美味しかったネ」

「そうそう!」

他のタレントたちも声を上げる。

「私もびっくりしたヨ」

「ご飯だけでも食べれるネ」

リトまで笑いながら頷いていた。

「そんなに違うのか?」

「違うヨ」

メイは即答した。

「日本のお米大好きネ」

その言葉に美緒が笑う。

「それは日本人として嬉しいかも」

「本当ネ」

メイも笑顔だった。

そして話題は次々と変わっていく。

「街もキレイだったヨ」

メイが言う。

「ゴミあまり落ちてないネ」

「確かにな」

私は頷いた。

言われてみれば、それは当たり前だと思っていた。

だけど他の国から見れば違うのかもしれない。

「私は電車ネ」

別のタレントが手を挙げる。

「時間ぴったり来るヨ」

「ああ」

「最初びっくりしたネ」

周りも頷いていた。

「バスもそうネ」

「フィリピンと違うヨ。エアコンもあるネ」

どうやら相当驚いたらしい。

「でも漢字は難しいヨ」

突然メイが言った。

「ああ、それは分かる」

私が笑う。

「駅の看板とか全然読めないネ」

「日本人でも難しい漢字あるぞ」

そう言うと店内に笑いが起きた。

「私はね」

別のタレントが続ける。

「夜に若い女の子が一人で歩いてるの見てびっくりしたヨ」

「あー」

リトが納得したように頷く。

「確かにネ」

「危なくないのかと思ったヨ」

私は思わず美緒を見る。

美緒は苦笑した。

「言われてみれば普通に歩いてるね」

「日本は安全ネ」

タレントたちは口々に言った。

「あとコンビニ!」

突然メイが声を上げる。

「コンビニ?」

「日本のコンビニすごいヨ!」

他のタレントたちも大きく頷く。

「何でも売ってるネ」

「お弁当あるネ」

「お菓子いっぱいネ」

「オニギリもすごく美味しいヨ!」

次々と飛び出す言葉に、私は思わず笑ってしまった。

どうやら相当気に入っているらしい。

しばらくそんな話で盛り上がっていると。

メイがふと美緒を見た。

「でもネ」

「ん?」

「私、美緒の日本語好きヨ」

「え?」

美緒が目を瞬かせる。

「可愛いネ」

「ソウソウ!」

他のタレントたちも頷いた。

「可愛いヨ」

「話し方優しいネ」

突然の集中攻撃に美緒が戸惑う。

「そうかな?」

「そうヨ」

メイは真面目な顔で言った。

「私たち、お客さん男の人ばっかりネ」

「うん」

「だから男の人の日本語覚えるヨ」

私は思わず笑った。

確かに毎日接しているのは男の客ばかりだ。

「だからネ」

メイは身を乗り出した。

「美緒みたいに話したいヨ」

「えっ?」

「教えてほしいネ」

「私も!」

「私もネ!」

気付けば美緒はタレントたちに囲まれていた。

「いや、そんな事言われても……」

困ったように笑う美緒。

その姿を見て、私は思わず吹き出す。

そして。

店内には再び笑い声が響いた。

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