193話「背負う人たち」

ストーブの暖かさが部屋へ広がる。

早苗はノートパソコンを膝へ乗せたまま言う。

「じゃあ作ろっか。昨日、女の子には一週間分の出張予定聞いてるから」

私は隣で頷く。

「週間スケジュールからだな」

早苗が画面を操作する。

一週間。月曜日から日曜日。

昼。夜。

出勤予定。休み。

スケジュール画面へ少しずつ増えていく。

「これなら予約しやすいと思う」

「確かにな」

私は頷いた。

次はプロフィールだった。

早苗が言う。

「質問は多い方がいいと思う」

「三十だっけ?」

「うん」

私は少し笑う。

「本当に見るのか?」

早苗が笑った。

「見るよ、綾さんや里奈と質問の内容も考えたんだから」

そう言いながら打ち込む。

好きな食べ物。

休日の過ごし方。

好きなタイプ。

苦手なもの。

好きな場所。

少しずつ項目が増える。

私は画面を見ながら言う。

「これ花水木もしないとな」

早苗が頷く。

「うん、した方がいいと思う」

私は携帯を取り出す。

美緒へメールを入れた。

しばらくすると返事が来る。

『それ絶対いいと思う』

少し笑う。

早苗がこちらを見る。

「なんて?」

「花水木もやるって」

早苗が少し笑った。

「そっか」

昼を過ぎた頃。

私は花水木へ向かった。

美緒のマンションではなく店だった。

花水木に着き事務室として使ってる部屋に入る。

美緒がこちらを見る。

「お疲れさま」

「ああ」

座ると美緒が書類を見せた。

「美咲さんとも話したよ」

予約。問い合わせ。出勤。

以前より明らかに増えていた。

「大介さんも言ってた」

美緒が続ける。

「誰がいついるかもっと分かりやすい方がいいって」

私は頷く。

「茉莉花も同じ事言ってた」

美緒が少し笑う。

「やっぱりそうなんだ」

私は書類を見る。

別々の場所。別々の人。

けれど。

考える事は少し似ていた。

美緒との話が落ち着きひと段落したあと、私は弘を呼んだ。

事務室のソファーに座らせる。

「茉莉花と花水木のことなんだが」

弘が頷く。

「客や店どうしとのトラブル」

「他店との付き合い方」

「女の子の問題」

弘は黙って頷きながら聞いていた。

「全部起きると思っとけ」

弘が小さく頷く。

私は続ける。

「大事なのは冷静になる事だ。

トラブルが起きたときはカッとなったり動揺するからな」

少し沈黙が流れ弘が言った。

「そうっすね……とにかく何かあったら、兄貴に連絡すると間違いないっすね!」

私は少し笑った。

「ああ」

窓の外を見る。

少し前までは、全部一人で考えていた。

けれど。

今は違う。

美緒が考える。

早苗が考える。

みんなが考える。

少しずつ。

背負うものは増えていた。

同時に。

一緒に背負ってくれる人も増えていた。

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