ストーブの暖かさが部屋へ広がる。
早苗はノートパソコンを膝へ乗せたまま言う。
「じゃあ作ろっか。昨日、女の子には一週間分の出張予定聞いてるから」
私は隣で頷く。
「週間スケジュールからだな」
早苗が画面を操作する。
一週間。月曜日から日曜日。
昼。夜。
出勤予定。休み。
スケジュール画面へ少しずつ増えていく。
「これなら予約しやすいと思う」
「確かにな」
私は頷いた。
次はプロフィールだった。
早苗が言う。
「質問は多い方がいいと思う」
「三十だっけ?」
「うん」
私は少し笑う。
「本当に見るのか?」
早苗が笑った。
「見るよ、綾さんや里奈と質問の内容も考えたんだから」
そう言いながら打ち込む。
好きな食べ物。
休日の過ごし方。
好きなタイプ。
苦手なもの。
好きな場所。
少しずつ項目が増える。
私は画面を見ながら言う。
「これ花水木もしないとな」
早苗が頷く。
「うん、した方がいいと思う」
私は携帯を取り出す。
美緒へメールを入れた。
しばらくすると返事が来る。
『それ絶対いいと思う』
少し笑う。
早苗がこちらを見る。
「なんて?」
「花水木もやるって」
早苗が少し笑った。
「そっか」
昼を過ぎた頃。
私は花水木へ向かった。
美緒のマンションではなく店だった。
花水木に着き事務室として使ってる部屋に入る。
美緒がこちらを見る。
「お疲れさま」
「ああ」
座ると美緒が書類を見せた。
「美咲さんとも話したよ」
予約。問い合わせ。出勤。
以前より明らかに増えていた。
「大介さんも言ってた」
美緒が続ける。
「誰がいついるかもっと分かりやすい方がいいって」
私は頷く。
「茉莉花も同じ事言ってた」
美緒が少し笑う。
「やっぱりそうなんだ」
私は書類を見る。
別々の場所。別々の人。
けれど。
考える事は少し似ていた。
美緒との話が落ち着きひと段落したあと、私は弘を呼んだ。
事務室のソファーに座らせる。
「茉莉花と花水木のことなんだが」
弘が頷く。
「客や店どうしとのトラブル」
「他店との付き合い方」
「女の子の問題」
弘は黙って頷きながら聞いていた。
「全部起きると思っとけ」
弘が小さく頷く。
私は続ける。
「大事なのは冷静になる事だ。
トラブルが起きたときはカッとなったり動揺するからな」
少し沈黙が流れ弘が言った。
「そうっすね……とにかく何かあったら、兄貴に連絡すると間違いないっすね!」
私は少し笑った。
「ああ」
窓の外を見る。
少し前までは、全部一人で考えていた。
けれど。
今は違う。
美緒が考える。
早苗が考える。
みんなが考える。
少しずつ。
背負うものは増えていた。
同時に。
一緒に背負ってくれる人も増えていた。

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