目が覚めると、部屋の中は静かだった。
昨夜のことを思い出す。
料金、やり方、店の形。
三人で決めたことは、もう頭の中でまとまっていた。
あとは動かすだけだった。
携帯を手に取り、時間を確認する。
届出制が始まるまで、まだ少し時間はある。
余裕とは言えないその“少し”で、どこまで準備できるかで、すべてが変わる気がしていた。
ベッドを出てリビングに行くと、キッチンからカリカリと豆を挽く音が聞こえた。
「おはよう」
キッチンで豆を挽いている美緒に声をかけた。
「おはよう、今コーヒー淹れてるんで」
美緒は豆を挽きながら振り向いて言った。
私はソファーに腰を下ろし、今日やることの順番を頭の中で組み立てた。
花水木と茉莉花の固定電話の開設。
昨夜決めたことを入力して、ホームページの完成とドメインの取得。
しばらくすると、美緒がマグカップを持ってリビングに入ってきた。
テーブルに置き、そのまま隣に座る。
「なぁ美緒。今日、月下美人の事務所に花水木で使う固定電話を開設してほしいんだ」
「分かりました。それから今日、藤本さんのところにも行ってきますね」
「あっ、そうだった。藤本の件も今日だったよな」
私は持っていたマグカップをテーブルに置き、バックから封筒を取り出した。
中から三十万を出して、テーブルの上に置く。
それを見た美緒は、何も言わずに小さく頷いた。
「それじゃ藤本の件も頼んどくな」
「はい。今日、借主の女の子の出勤時間に合わせて行ってきますね」
美緒は借用書などを確認しながら言った。
「あっ。直人さん、ホームページに載せる女の子の写真はどうしますか?」
美緒が思い出したように言った。
「写真か……忘れてた。
プロに頼まないといけないのか?」
「いえ、今のデジカメは性能がいいですし、少し撮影の仕方を工夫して、パソコンがあれば個人で撮影しても問題ないですよ」
「個人って言ってもなぁ……」
私が考え込んでいると、
「私が撮影しますよ。
男性が撮るより女性の方がいいと思います」
美緒は確信を持ったような顔で言った。
「それじゃ撮影は美緒に任せる」
「はい、任せてください」
美緒は私の目を見て笑顔でこたえた。
その表情を見て、少しだけ肩の力が抜けた気がした。

コメント