124話「動かしはじめる」

目が覚めると、部屋の中は静かだった。

昨夜のことを思い出す。

料金、やり方、店の形。

三人で決めたことは、もう頭の中でまとまっていた。

あとは動かすだけだった。

携帯を手に取り、時間を確認する。

届出制が始まるまで、まだ少し時間はある。

余裕とは言えないその“少し”で、どこまで準備できるかで、すべてが変わる気がしていた。

ベッドを出てリビングに行くと、キッチンからカリカリと豆を挽く音が聞こえた。

「おはよう」

キッチンで豆を挽いている美緒に声をかけた。

「おはよう、今コーヒー淹れてるんで」

美緒は豆を挽きながら振り向いて言った。

私はソファーに腰を下ろし、今日やることの順番を頭の中で組み立てた。

花水木と茉莉花の固定電話の開設。

昨夜決めたことを入力して、ホームページの完成とドメインの取得。

しばらくすると、美緒がマグカップを持ってリビングに入ってきた。

テーブルに置き、そのまま隣に座る。

「なぁ美緒。今日、月下美人の事務所に花水木で使う固定電話を開設してほしいんだ」

「分かりました。それから今日、藤本さんのところにも行ってきますね」

「あっ、そうだった。藤本の件も今日だったよな」

私は持っていたマグカップをテーブルに置き、バックから封筒を取り出した。

中から三十万を出して、テーブルの上に置く。

それを見た美緒は、何も言わずに小さく頷いた。

「それじゃ藤本の件も頼んどくな」

「はい。今日、借主の女の子の出勤時間に合わせて行ってきますね」

美緒は借用書などを確認しながら言った。

「あっ。直人さん、ホームページに載せる女の子の写真はどうしますか?」

美緒が思い出したように言った。

「写真か……忘れてた。

プロに頼まないといけないのか?」

「いえ、今のデジカメは性能がいいですし、少し撮影の仕方を工夫して、パソコンがあれば個人で撮影しても問題ないですよ」

「個人って言ってもなぁ……」

私が考え込んでいると、

「私が撮影しますよ。

男性が撮るより女性の方がいいと思います」

美緒は確信を持ったような顔で言った。

「それじゃ撮影は美緒に任せる」

「はい、任せてください」

美緒は私の目を見て笑顔でこたえた。

その表情を見て、少しだけ肩の力が抜けた気がした。

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