江崎さんの店での出来事がきっかけで、私は新しい一歩を踏み出すことになった。
講習会場は都市部。
一時間ほどの道のりだった。
その間、恵美と軽い雑談を交えながら、これからの話をした。
会社名のこと。
動き方のこと。
自分たちの立ち位置。
会社名はいくつか候補を出し合い、静かに考えながら――
ほぼ同時に、その言葉が出た。
「LINK。」
顔を見合わせる。
自然と笑みがこぼれる。
答えは自然にそこにあった。
二人で決めた。
LINK CORPORATION。
会場には、すでに多くの人が集まっていた。
ブランドのバッグ。
金色の時計。
派手な装い。
自分とは違うタイプばかりだと、冷静に感じた。
焦りはない。
私は私のスタイルで行く。
その考えは、最初から変わっていない。
恵美は落ち着いたまま、周囲に流されることなく静かだった。
その姿が、心強かった。
講習は淡々と進み、必要な説明が終わると終了した。
正式な登録手続きを済ませ、
LINK CORPORATIONは形になった。
そのままホテルで食事をした。
落ち着いた空間。
柔らかな照明。
食事の途中、恵美がふと微笑む。
「今日が、あなたの表の顔の誕生日ね。」
私は少しだけ考えて、頷いた。
恵美はグラスを持ったまま、静かに続ける。
「これで、堂々と一緒にいられるわ。」
そう言って、そっと私の手に触れた。
一瞬、視線が重なる。
言葉はそれだけ。
しかし、その温度が確かに意味を持っていた。
LINK CORPORATIONの誕生。
そして、私の表の顔の始まり。
派手ではない。
それでも、確かな一歩だった。
私は自分のスタイルで行く。
その静かな決意は、もう揺らがなかった。

コメント