「お疲れさまでしたー。明日は六時出勤だから、五時半頃迎えにくるね。ゆっくり休んでねー」
弘が笑顔で女の子に手を振る。
深夜三時過ぎ、最後の女の子を自宅に送り届け、月下美人の初日の営業が終わった。
「兄貴、滑り出しは上々っすね。やっぱ兄貴の言った通りのシステムにして正解っすよ!」
当時、今のように届出制のデリヘルはなく、完全な違法営業だった。
その為、この業界は裏の世界に関わりがある者が営業しており、全て店側に有利なシステムになっていた。
今と比べると利用料金は高い。しかし女の子の給与は低い。それが暗黙のルールのようになっていた。
私は女の子が集まりやすく、定着するよう、給与システムを独自の設定に変えていた。
「女の子が取り分多いって喜んでましたよ! っていうか腹減ったっすね」
「そういえば昼飯にマック食べたっきりだったな。ファミレスでも行くか」
「兄貴、了解っす!」
弘は敬礼するポーズをして笑った。
ファミレスに入り、私はハンバーグセット、弘はハンバーグセットのご飯大盛りとスパゲッティを注文した。
二人で今日の店の売上を確認した。
「兄貴、十六万っすよ!」
「すごいな。そんなに上がったのか!」
「何人か待ち時間あったから入らなかったっすけど、スムーズに入ってたら二十万超えてたっすよ!」
一日でこんな金額が動くとは思っていなかった。
この調子でいくと、月にどれくらいの売上になるのだろうか。
恵美さんと折半とはいえ、今まで稼いだことのない金額になるのは間違いない。
弘がハンバーグを切らず、そのままかぶりつきながら言った。
「兄貴、この調子だとドライバーもう一人増やしたがいいっすよ。自分、心当たりあるんで声かけてもいいっすか?」
「でも俺がいるから、今すぐじゃなくても大丈夫だろう?」
弘はスパゲッティを箸ですすりながら言った。
「俺思うんすけど、兄貴は実務業務あまりしないがいいっすよ。だって執行猶予中でしょ。裏で指揮する方がいいっすよ」
「うーん、そうかなぁ?」
「もしもの事があったときヤバいっすから。実務的なことは自分に任せてくださいよ!」
そうだ。
社会に出て慣れてしまい、執行猶予中という足枷がある意識が少し軽くなっていた。
弘の言う通り、もし何かあったときはプラス三年を背負わなければならない。
有頂天になりかけている自分にブレーキをかけなければと思った。
用心するに越したことはない。
そんなことを考えていると――
「兄貴、チョコパフェ頼んでいいっすか!」
その声に我に返った。

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