4.社会復帰編

4.社会復帰編

45話「春の花びらと石鹸箱」

桜の花も満開に咲き、季節はすっかり春だ。淡いピンクの花びらがひらひらと舞い、ほのかな香りが春風に乗って漂う。季節が変わるということは、陣さんや井原君が刑務所に移送されるのも近づいている。早苗は「何それ」とケラケラ笑った。石鹸箱の話をしたから...
4.社会復帰編

44話「焼肉と約束」

早苗に迎えに行くと連絡を入れ、店の近くで待っていた。佐藤さんから頼まれた件を考えていると、バックミラーの中で早苗がキョロキョロと私の車を探しているのが見えた。クラクションを鳴らすと気付き、小走りで駆けてくる。車に乗り込んできた瞬間、夜の世界...
4.社会復帰編

43話「名刺の代紋」

その初老の男性はカウンター席に座り、酒を飲み始めた。先輩が私のこれまでの経緯を話すと、初老の男性は声を出さず頷きながら聞いていた。話が終わると、私に手招きし、隣に座るよう椅子を軽く叩いた。挨拶して席に着くと、こちらに向き直り「大変だったね。...
4.社会復帰編

42話「転がり始めた歯車」

拘置所を出てから一週間が過ぎた。初めは感動や戸惑いに包まれていた日常にも、すっかり慣れてしまっていた。陣さんは別の拘置所へ移送されていた。高速道路と都市高速を使っても一時間ほど離れた場所だった。井原君と陣さんの面会や手紙のやり取りで、毎日が...
4.社会復帰編

41話「境界線の向こう側」

静かな朝を迎えた。あの「起床ー!」という号令で目覚めなくていいのかと思うだけで嬉しかった。だが、あの爽やかなクラシックの音楽は、この朝の方がよほど似合っている気がした。コーヒーの良い香りがする。この当たり前の朝を迎えられるだけで、幸せを実感...