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5.再出発編[61話~85話]

68話「放っておけない男」

エンジンをかけると、弘は嬉しそうにシートにもたれた。「うわ、マジで助手席っすね。なんかあの頃に戻った感じしますね」大げさに笑うが、その目は真っ直ぐ前を見ている。昔と同じ場所。けれど、これから走る道は、あの頃とは違う。私は弘に車で待つように言...
5.再出発編[61話~85話]

67話「兄貴と呼ぶ男」

「あっ!兄貴!兄貴じゃないですかー!」背後から響いた声に振り返ると、手を振りながら駆け寄ってくる男がいた。色落ちしたデニムに派手なシャツ。無造作な髪。相変わらずだ。「弘……」「うわ、マジで兄貴だ。何してんすかこんなとこで。俺、最初見間違いか...
5.再出発編[61話~85話]

66話「姐さんの背中」

最近は、午前中は刺青、午後からは恵美さんとの仕事の準備。それが一日のルーティンのようになっていた。毎日、熱と痛みに付き合う日々。線で描かれていた鯉に鱗が入り、目が彫られ、色が差されていく。日を追うごとに輪郭は厚みを持ち、やがてリアルな真鯉へ...
5.再出発編[61話~85話]

65話「鏡の中の鯉」

マンションのドアを開けると、いつもの匂いがした。背中はまだ熱を持っている。シャツが擦れるたび、じんわりとした痛みが遅れて追いついてくる。「おかえり」早苗がキッチンから顔を出した。いつもと同じ声だった。靴を脱いで部屋に上がる。ソファに腰を下ろ...
5.再出発編[61話~85話]

64話「戻れないと思った日」

早苗を迎えに行く途中、恵美さんに連絡を入れた。恵美さんはすぐに電話に出た。「どうしたの? 今、あなたに連絡しようと思ってたの」「あのう、この前言ってた刺青の件ですが、お願いしようと思って」少し沈黙が流れ、恵美さんの息遣いだけが聞こえてきた。...