「もしもし、ナオト。今、大丈夫かナ?」
携帯電話から聞こえてきたのは、リトのいつもの陽気な声だった。
その声を聞くと、どこかホッとする自分がいる。
「おお、リト。大丈夫だよ。どうした?」
「さっきフィリピンの奥さんから、この前ナオトと話した家を大きくする話のことで電話あったヨ」
「そうか」
私は小さく頷く。
「分かった。それじゃ、あとでリトが仕事が終わる頃迎えに行くから」
「今日は仕事休みだヨ」
「そうか、分かった!それじゃマンションに迎えに行くから。後で連絡する」
「うん!待ってるネ」
電話を切ると、隣で運転していた弘が私を見る。
「リトからっすか?」
「ああ。エージェントの仕事のことで話があるみたいだ」
「そう言えばエージェントの方はどうなってるんすか?」
私は外の景色へ目を向けながら答えた。
「まだまだ準備段階だよ。向こうで動いてくれる人も必要だし、日本での受け入れ態勢も整えなきゃならない。簡単に始められる仕事じゃないからな」
弘は感心したように頷く。
「しかしすごいっすね。フィリピンでも仕事って。俺だったら色々考えて頭パンクしそうっすよ」
そう言うと、弘は笑みを浮かべた。
「俺と兄貴は同じ中卒で歳も一個しか変わらないのにですね」
私は思わず吹き出した。
「俺とお前は元々の出来が違うんだよ、バカ」
「ひどいっすよ、兄貴!」
車内に二人の笑い声が響く。
ひとしきり笑ったあと、弘が私をちらりと見た。
「それで今日、リトと会うんすか?」
「ああ。そのつもりだ」
「あっ、それじゃ……俺も」
私は弘を見る。
「なんだ。一緒に行きたいのか?」
「はい! 俺と兄貴は一心同体じゃないっすか!」
満面の笑みでそう言う弘に、私は呆れたように笑った。
「お前、本当に調子いいなぁ」
そう言って弘の頭を軽く叩く。
「いてっ!」
弘は笑いながら頭を押さえた。
私は携帯電話を取り出し、美緒へメールを送る。
リトから連絡があり、これから会うことになったこと。そして弘も一緒に連れて行っていいかを伝えた。
信号待ちをしている間に返信が届く。
『私がいるから問題ないよ(^-^)/ リトとゆっくり話してきて』
私はそのメールを読み、小さく笑みを浮かべた。
「よし」
私はリトへ電話をかけた。
「今から迎えに行くよ」
「分かったヨ。それじゃ待ってるネ」
電話を切る。
そのとき信号が青に変わった。
「行くぞ」
「はい!」
弘は嬉しそうにアクセルを踏み込む。
ゆっくりと走り出した車は、リトの待つマンションへ向かっていった。

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