266話「動き出す計画」

「もしもし、ナオト。今、大丈夫かナ?」

携帯電話から聞こえてきたのは、リトのいつもの陽気な声だった。

その声を聞くと、どこかホッとする自分がいる。

「おお、リト。大丈夫だよ。どうした?」

「さっきフィリピンの奥さんから、この前ナオトと話した家を大きくする話のことで電話あったヨ」

「そうか」

私は小さく頷く。

「分かった。それじゃ、あとでリトが仕事が終わる頃迎えに行くから」

「今日は仕事休みだヨ」

「そうか、分かった!それじゃマンションに迎えに行くから。後で連絡する」

「うん!待ってるネ」

電話を切ると、隣で運転していた弘が私を見る。

「リトからっすか?」

「ああ。エージェントの仕事のことで話があるみたいだ」

「そう言えばエージェントの方はどうなってるんすか?」

私は外の景色へ目を向けながら答えた。

「まだまだ準備段階だよ。向こうで動いてくれる人も必要だし、日本での受け入れ態勢も整えなきゃならない。簡単に始められる仕事じゃないからな」

弘は感心したように頷く。

「しかしすごいっすね。フィリピンでも仕事って。俺だったら色々考えて頭パンクしそうっすよ」

そう言うと、弘は笑みを浮かべた。

「俺と兄貴は同じ中卒で歳も一個しか変わらないのにですね」

私は思わず吹き出した。

「俺とお前は元々の出来が違うんだよ、バカ」

「ひどいっすよ、兄貴!」

車内に二人の笑い声が響く。

ひとしきり笑ったあと、弘が私をちらりと見た。

「それで今日、リトと会うんすか?」

「ああ。そのつもりだ」

「あっ、それじゃ……俺も」

私は弘を見る。

「なんだ。一緒に行きたいのか?」

「はい! 俺と兄貴は一心同体じゃないっすか!」

満面の笑みでそう言う弘に、私は呆れたように笑った。

「お前、本当に調子いいなぁ」

そう言って弘の頭を軽く叩く。

「いてっ!」

弘は笑いながら頭を押さえた。

私は携帯電話を取り出し、美緒へメールを送る。

リトから連絡があり、これから会うことになったこと。そして弘も一緒に連れて行っていいかを伝えた。

信号待ちをしている間に返信が届く。

『私がいるから問題ないよ(^-^)/ リトとゆっくり話してきて』

私はそのメールを読み、小さく笑みを浮かべた。

「よし」

私はリトへ電話をかけた。

「今から迎えに行くよ」

「分かったヨ。それじゃ待ってるネ」

電話を切る。

そのとき信号が青に変わった。

「行くぞ」

「はい!」

弘は嬉しそうにアクセルを踏み込む。

ゆっくりと走り出した車は、リトの待つマンションへ向かっていった。

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