「うん」
早苗は頷くと、パソコンの画面を操作しながら説明を始めた。
「このトップページに小さなバナーが並んでるでしょ?」
私は画面を見つめながら頷く。
「これは、お店ごとに掲載料をもらって載せてるの。バナーの大きさによって料金も違うんだよ」
「なるほど」
「お客さんがお店を探すときに、このバナーをクリックすると、そのままお店のホームページへ移動できるの」
私は試しにマウスを動かしてみる。
「ホームページだけじゃ分からない雰囲気も、口コミを見れば伝わるってことか」
「そういうこと」
早苗は嬉しそうに微笑んだ。
「だからホームページを作る仕事だけじゃなくて、このサイトに掲載したいっていうお店も出てくると思うの。それに、ホームページの管理も頼まれるかもしれないし」
私は思わず感心した。
「なるほどな……。俺には思いつかない発想だ」
そう言うと、早苗は少し照れくさそうに笑った。
「だって、あなたは他にも色々な仕事をしてるでしょ? 私は茉莉花にいる時間が長いから、その分考える時間もあるんだよ」
私はコーヒーを口に運びながら首を傾げる。
「でも、茉莉花の仕事もあるし、最近は送迎にもよく出てるだろ。大変じゃないか?」
「あっ、そうそう」
早苗は思い出したように顔を上げた。
「遠方も固定で仕事が入るようになったから、綾さんにスタッフを増やしたいって相談したの」
「へぇ」
「そしたらね、信用できて、よく働く女性がいるって教えてくれたの。前のお店で綾さんと一緒にスタッフをしていた人なんだって」
私は自然と笑みがこぼれた。
「綾さんの紹介なら間違いないな」
「うん」
早苗は大きく頷いた。
その表情を見ていると、茉莉花は少しずつではあるが、確実に前へ進んでいることを実感する。
人との出会いが新しい仕事を生み、その仕事がまた新しい出会いを連れてくる。
私はコーヒーカップを静かに置き、水槽の中をゆったりと泳ぐ金魚へ目を向けた。
茉莉花にも、また新しい風が吹こうとしていた。

コメント