255話「未来を描く」

「うん」

早苗は頷くと、パソコンの画面を操作しながら説明を始めた。

「このトップページに小さなバナーが並んでるでしょ?」

私は画面を見つめながら頷く。

「これは、お店ごとに掲載料をもらって載せてるの。バナーの大きさによって料金も違うんだよ」

「なるほど」

「お客さんがお店を探すときに、このバナーをクリックすると、そのままお店のホームページへ移動できるの」

私は試しにマウスを動かしてみる。

「ホームページだけじゃ分からない雰囲気も、口コミを見れば伝わるってことか」

「そういうこと」

早苗は嬉しそうに微笑んだ。

「だからホームページを作る仕事だけじゃなくて、このサイトに掲載したいっていうお店も出てくると思うの。それに、ホームページの管理も頼まれるかもしれないし」

私は思わず感心した。

「なるほどな……。俺には思いつかない発想だ」

そう言うと、早苗は少し照れくさそうに笑った。

「だって、あなたは他にも色々な仕事をしてるでしょ? 私は茉莉花にいる時間が長いから、その分考える時間もあるんだよ」

私はコーヒーを口に運びながら首を傾げる。

「でも、茉莉花の仕事もあるし、最近は送迎にもよく出てるだろ。大変じゃないか?」

「あっ、そうそう」

早苗は思い出したように顔を上げた。

「遠方も固定で仕事が入るようになったから、綾さんにスタッフを増やしたいって相談したの」

「へぇ」

「そしたらね、信用できて、よく働く女性がいるって教えてくれたの。前のお店で綾さんと一緒にスタッフをしていた人なんだって」

私は自然と笑みがこぼれた。

「綾さんの紹介なら間違いないな」

「うん」

早苗は大きく頷いた。

その表情を見ていると、茉莉花は少しずつではあるが、確実に前へ進んでいることを実感する。

人との出会いが新しい仕事を生み、その仕事がまた新しい出会いを連れてくる。

私はコーヒーカップを静かに置き、水槽の中をゆったりと泳ぐ金魚へ目を向けた。

茉莉花にも、また新しい風が吹こうとしていた。

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