リトとの話も一段落し、美緒と弘が私たちの席へ戻ってきた。
「いやぁ、楽しかった!」
弘は満面の笑みを浮かべ、料理を頬張っている。
その様子を見ていると、美緒が嬉しそうに私へ顔を向けた。
「あのね、黒木のタレントたちがアクセサリーを見たいって言ってたの。だから今度、みんなが住んでるアパートに行く約束をしたんだ。日にちはまた連絡してくれるって」
「そうか。それは良かったな」
私は自然と笑みがこぼれた。
少しずつではあるが、アクセサリー販売が順調に広がっていることを実感していた。
食事を終え、私たちは黒木のタレントたちへ軽く挨拶をしてカレンデリアを後にした。
リトをマンションまで送る車の中では、美緒と弘が今度の販売のことを楽しそうに話している。
その会話を聞いていたリトが、ふと私を見た。
「ナオト、私は明日フィリピンに電話して、家を大きくするためのことを調べておくネ」
「ああ。フィリピンサイドのことはリトに任せる。費用がどれくらいかかるのか、その辺も調べておいてくれ」
「うん、分かったヨ!」
リトは笑顔で頷いた。
マンションへ着くと、リトは車を降り、私たちの車が見えなくなるまで笑顔で手を振り続けていた。
その姿を見ながら、私は胸の奥が少し温かくなった。
その後、弘に美緒のマンションまで送ってもらう。
「兄貴、ご馳走さまでした! 次も頑張ります!」
弘は笑顔で頭を下げ、車を走らせていった。
部屋へ入ると、私はソファーへ身体を預ける。
「コーヒー淹れるね」
美緒はそう言ってキッチンへ向かった。
私は天井を眺めながら、今日リトと話したことをぼんやり思い返していた。
しばらくすると、美緒がコーヒーカップを持って隣へ座る。
「はい。」
カップを受け取ると、美緒が少し笑った。
「弘さんって、思ってた以上にアクセサリー販売に向いてるね」
「そうみたいだな。あいつは俺と違って人見知りもしないし、人の輪にも自然と入っていけるからな」
美緒は何度も頷く。
「それが弘さんの才能なんだね」
そして思い出したように続けた。
「あっ、それと今日も結構売れたし、今度は黒木のアパートにも行くから、黒木のタレント用のアクセサリーも多めに仕入れたほうがいいかも」
「分かった。明日、高橋社長に連絡してみるよ」
翌朝。
私はいつものように美緒に優しく起こされた。
ぼんやりしたままソファーへ座ると、美緒がテーブルにコーヒーを置き、いつものように私の髪を指先で整えてくれる。
コーヒーを一口飲み、高橋社長へ連絡しようと携帯を手に取った。
画面には、高橋社長からメールが届いていた。
『お疲れさまです。お預かりしていた指輪のサイズ直しが仕上がりましたので、ご連絡させていただきました。本日夕方までは時のかけらにおりますので、よろしくお願いいたします。』
私はすぐに時計を確認し、昼過ぎに伺うことと、仕入れたいアクセサリーの内容を返信した。
コーヒーを飲みながら、美緒へメールの内容と今日の予定を話す。
昼前、私はマンションを出て時のかけらへ向かった。
高橋社長といつものように話をしながら仕入れを済ませ、店を後にする。
車へ乗り込むと、私は黒木ママへ電話をかけた。
「あら、直人くん。久しぶり」
明るい声が受話器から聞こえてくる。
「お疲れさまです。預かっていた指輪のサイズ直しが出来上がったので、ご連絡しました」
「そうなの。直人くん、今どこにいるの?」
「今は駅の近くにいます」
するとママは少し嬉しそうな声で言った。
「お昼まだなら、一緒にランチでもどう?」
「はい!」
「それじゃ決まりね。ちょっと直人くんに話もあるから」
その一言が少しだけ気になった。
私は何の話だろうと思いながら、待ち合わせの店へ車を走らせた。

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