「話があるヨ。」
リトの言葉を聞いた私は、小さく頷いた。
ちょうどエレベーターが上がってくるのを待ちながら、私は弘へ声を掛ける。
「弘、腹減ってないか?」
弘は笑いながら自分の腹をさすった。
「一仕事終わったから、お腹ぺこぺこっす!」
その様子に私は笑う。
「それじゃ、カレンデリアに行くか」
美緒も嬉しそうに頷いた。
「いいね。」
その時、エレベーターの扉が静かに開く。
四人で乗り込むと、弘が不思議そうな顔で私たちを見た。
「カレンデリアって何すか?」
美緒は微笑みながら答える。
「すごく美味しいフィリピン料理のお店です。それにマンゴージュースが最高なんですよ」
弘の目が輝いた。
「フィリピン料理とか食ったことないっす。マンゴージュースも気になるなぁ」
その言葉にリトが嬉しそうに笑った。
「きっと気に入るヨ」
マンションを出ると四人で弘の車へ乗り込み、カレンデリアへ向かった。
私はリトと後部座席へ座る。
助手席では美緒が今日の販売の様子を振り返りながら、弘と楽しそうに話していた。
「最初は緊張してたのに、途中からすっかり慣れてましたね」
「いやぁ、夢中だったよ」
二人の笑い声を聞きながら、私はリトへ視線を向ける。
「フィリピンで準備しなくちゃいけないこと、分かったか?」
リトは頷いた。
「うん。だいたい分かったヨ」
そして今度は私へ聞き返す。
「ナオトは?」
「俺も調べたよ。あれからシゲさんに相談しにラ・カシーナへ行ってきた」
リトは少し驚いたように目を見開き、すぐに笑顔になった。
「あっ! シゲさんに会いに行ったんだ!」
そんな話をしているうちに、車はカレンデリアへ到着した。
店内へ入ると、食欲をそそる香辛料の香りが漂っている。
店は多くの客で賑わい、店員たちが忙しそうに料理を運んでいた。
私たちは奥のテーブルへ腰を下ろす。
弘は辺りを見回しながら鼻をくんくんと動かした。
「何かスパイスの香りっていうか……初めての匂いっす」
リトは笑いながらメニューを開く。
「この前と同じ料理でいい?」
私たちは頷く。
私が一言付け加えた。
「マンゴージュースも」
リトは笑って親指を立てた。
「分かってるヨ!」
料理が運ばれてくるまでの間、四人は今日の販売のことや売上の話で盛り上がった。
やがてテーブルいっぱいに料理が並ぶ。
弘は一口食べるなり、目を丸くした。
「うまい! めちゃくちゃ美味いっす!」
夢中になって料理を頬張る弘を見て、私たちは思わず笑ってしまう。
穏やかな時間が流れていた、その時だった。
「あっ、ミオ!」
店の奥から明るい声が聞こえた。
美緒が振り返る。
「あっ!」
そこにはクラブ黒木のタレントたちが楽しそうに食事をしていた。
美緒は席を立ち、笑顔でそのテーブルへ向かう。
楽しそうに話したあと、こちらを向いて手を振った。
「弘さん!」
弘は口いっぱいに料理を頬張ったまま目を丸くする。
「えっ、俺っすか?」
慌てて口の中のものを飲み込み、美緒のいるテーブルへ歩いて行く。
どうやら弘を紹介しているようだった。
しばらくすると、美緒は戻ってきて自分と弘のマンゴージュースを手に取った。
私とリトの顔を見比べると、何かを察したように小さく微笑んだ。
「ちょっと向こうで話してくるね」
私はその気遣いに気付き、小さく頷いた。
「うん。」
美緒はタレントたちのテーブルへ戻っていく。
私はリトへ向き直った。
「それで、フィリピンサイドはまず何から準備すればいい?」
リトは静かに頷き、ゆっくりと話し始めた。

コメント