222話「広がる縁」

朝、いつものように美緒に優しく肩を揺すられて目を覚ました。

「起きて」

ぼんやりと目を開けると、美緒がベッドの端に座って笑っている。

「また寝癖すごいよ」

そう言いながら、跳ねた髪を手で整えてくれた。

「……ありがとう」

「はい、できた」

私は苦笑しながらベッドを降りた。

リビングに行くと、コーヒーの良い香りが広がっている。

朝食は美緒が買ってきてくれた焼きたてのパンとコーヒーだった。

「美味そうだな」

私は笑って手を合わせた。

「いただきます」

しばらくして、私は昨日のことを思い出していた。

「昨日、リトたちのマンション見てて思ったんだけどさ」

「うん?」

「同じ街で、同じようなフィリピンクラブで働いてても、店が違うだけで待遇って結構違うんだな」

美緒はコーヒーカップを置いた。

「そうなんだ」

「ああ、黒木のタレントのアパートは全然違ったんだよな。何て言うか、少し引っ掛かってさ」

「実際に見ちゃうと考えちゃうよね」

「そうなんだよ」

私は頷いた。

「まあ、俺には分からない事情もあるんだろうけどな」

朝食を終えると、私は高橋社長にメールを送った。

ミッシェルから聞いた話をもとに、黒木のタレントたちが好みそうなアクセサリーを少し多めに仕入れたいこと。

それから、黒木のママに似合いそうなシンプルなアクセサリーも数点欲しいことを伝えた。

すると、すぐに返信が来た。

今日の午後二時頃、時のかけらに行くので良かったら来てください。

私は『お伺いします』と返信した。

午後になり、私は時のかけらへ向かった。

「メールでの黒木のタレントさんたちの雰囲気なら、こういうデザインも喜びそうですね」

高橋社長は並んだアクセサリーを見ながら言った。

「そうですね。黒木のタレントもそんなこと言ってました」

「それなら少し多めに用意しておきましょうか」

「お願いします」

それから、黒木のママに似合いそうなシンプルなアクセサリーも選び、仕入れを終えた。

そして、そのまま茉莉花へ戻った。

二階の部屋に上がると、早苗がコーヒーを淹れてくれた。

早苗は私の隣に座ると、カップを手渡しながら聞く。

「それで、クラブ黒木のママどうだった?」

「思ったよりいい人だったよ」

私はコーヒーを一口飲み、昨日の出来事を話した。

すると早苗は少し驚いた顔をする。

「えっ、黒木のママに気に入られたの?」

「気に入られたかどうかは分からないけど、協力はしてくれてるな」

「すごいよ」

早苗は感心したように言った。

「黒木のママってやり手で有名なんだけど、あんまり同業者とかと付き合いしないみたいなんだよ」

「そうなのか?」

「うん。昔から評判の人だし、付き合う相手も選ぶって聞くよ。だから協力してくれるなんて珍しいと思う」

私は少し驚いた。

そんな話をしていると、携帯電話が鳴った。

私はコーヒーカップを置いて画面を見る。

そこに表示されていた名前を見て、思わず笑みが浮かんだ。

ミッシェルからだった。

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