9話「25番」

想像以上だった。

拘置所に入所して、わずか三十分ほどで戦意喪失してしまった。最初に、すべて脱ぐよう指示された。

下着一枚で突っ立っていると、間髪入れずに怒鳴り声が飛んできた。

罵声の連続だった。

これまでの人生で、一度も浴びたことのない種類の言葉だった。急いで下着を脱ぎ、産まれたままの姿になる。

身体検査が始まった。

刺青の有無。

性器の形。「玉入れ」と呼ばれるもの。

指の欠損。

一つひとつ、マジマジと確認された。

次に、四つん這いになるよう命じられた。床を見ると、手の位置と足の位置が描かれている。

一瞬ためらっていると、また怒鳴られた。

「貴様!ここがどこか分かっているのか!この馬鹿が!」

観念して、思いきり四つん這いになった。

尻をこれでもかというほど広げられ、肛門を調べられた。中に何かを隠していないか確認するためだという。

検査が終わると、称呼番号を与えられた。

これから先は、名前ではなく番号で呼ばれるのだと告げられる。

私は、25番になった。

拘置所の心得のような冊子を渡され、よく読むよう指示された。

目を通そうとしたが、立て続けに起きた出来事が衝撃的すぎて、

内容はまったく頭に入ってこなかった。

しばらくして、

暴力団を連想させるような、ガタイのいい刑務官が部屋に入ってきた。

「おい。ちゃんと読んだか?」

「はい」と答えると、

刑務官は口元に、かすかな笑みのようなものを浮かべて言った。

「これから先、知らなかった、分からなかった、そんな言い訳は一切通用しないからな!」

また怒鳴り声が響いた。

その後、房へ連れて行かれた。

途中の廊下には、布団が乱雑に置かれていた。

「これがお前の布団だ。さっさと持て!」

刑務官は、足で布団を差し示した。慌てて抱きかかえるように持つと、かなり重かった。

スリッパも支給された。

子供の頃、田舎のトイレにあったような、売っているのを見たことがないタイプのスリッパだった。

房に入ると、

「ちゃんと揃えろ!」

と、また怒鳴られた。

中に入るとすぐ、施錠された。

ここは雑居房らしく、複数人で生活する部屋だった。

留置場は冷暖房完備だったが、ここには、そういった設備は一切ないようだった。

腰を下ろし、部屋を見回す。

建物自体がかなり古く、無機質だった。

この階には誰もいないのかと思うほど、静まり返っている。

これから、ここで生活していく。

そう考えたとき、

もう、戦意は残っていなかった。

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