6話「慣れていく自分」

留置場での生活にも、少しずつ慣れていく自分がいた。それが良いことなのかどうかは、その時はまだ分からなかった。

朝は、起床の合図が鳴る前に目が覚めるようになっていた。合図とともに布団をたたみ、そのまま掃除に取りかかる。

初めは強い抵抗があったトイレ掃除。道具は使えず、雑巾だけで便器の中まで磨かなければならない。

そのやり方を教えてくれたのは、留置場の職員ではなく、同じ部屋にいた暴力団組員の人だった。

留置場での生活のルールも、その人から教えてもらった。社会では、まず教わることのないようなことばかりだった。

雑巾がけの仕方。

入浴の仕方。

服や布団のたたみ方。

逮捕されてから裁判が終わるまでの流れ。取調べや刑事との接し方、どこまで踏み込んでいいのかという線引き。

拘禁生活が初めてだった私も、何となく、これからの流れを理解しはじめていた。

入浴できるのは、週に一度だけだった。その時も職員が風呂場のドアの前に座り、こちらを監視している。

初めの頃は落ち着かず、どうしていいか分からなかった。だが、それにも、いつの間にか慣れてしまっていた。

一ヶ月ほど過ぎた頃には、

拘禁生活にすっかり慣れてしまっている自分がいた。

取調べが落ち着いてくると、房にいる時間が多くなった。人の入れ替わりもあり、そこでいろいろな人と出会い、いろいろな話を聞いた。

その頃には、一日が長いとも短いとも感じなくなっていた。

ただ、

決められた流れの中で、日々が過ぎていった。

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