物件の戸建を出たあと、
まだ少し現実感のないまま、私たちは三人で食事に行くことになった。
私は車に乗る前に、もう一度外から建物を眺めた。
そして不動産屋に連絡を入れ、契約することを伝えた。
車に乗り込むと、二人はすでに食事に行く店を決めていた。
その店は、大きな古民家を飲食店としてリノベーションした、オシャレなチャイニーズレストランだった。
店内は落ち着いた雰囲気で賑わっていて、客のほとんどは女性だった。
個室に案内され、ジャスミン茶が運ばれてきた。
「雑誌に見たとおり、いいお店だね」
早苗が言うと、
「うん、早苗が選ぶお店って昔から当たりだったよね。さすが早苗、男とお店を選ぶセンスはいいよね」
里奈ちゃんはケラケラと笑った。
注文を済ませ、店員が個室のドアを閉めると、早苗がこちらを見た。
「さっきの物件に決めたんでしょ?」
「ああ。不動産屋に連絡して、契約するって言った」
「あの場所、事務所にいいよね。車も何台か停められるし、リビングもかなり広いもんね。
二階に部屋もあるし…」
早苗は顎に手を当て、考えるような顔をしていた。
「二階の奥の部屋は、私が使っていいよね?」
里奈ちゃんは私と早苗を交互に見ながら言った。
「私はいいけど…」
そう言って、早苗は私を見た。
「俺は全然いいよ。早苗も、里奈ちゃんがいた方が何かと心強いだろ」
「決まりー!
早苗も事務所に住めばいいじゃん。二階の広い部屋だったら、直人くんと二人でも十分の広さだよ。ダブルベッドも置けるしね!」
里奈ちゃんは、またケラケラと笑った。
「お待たせしました」
ドアが開き、料理が運ばれてきた。
三人で食事をしながら、今後の準備や仕事の流れについて話した。
里奈ちゃんは、契約が終わって鍵を受け取ったら、すぐに事務所へ引っ越し、細々とした準備を進めることになった。
話していると、里奈ちゃんが私の顔をじっと見て言った。
「直人くん、なんか目つきが変わったね。
顔は前と同じで優しいんだけど、目だけが別人みたいに鋭くなってる」
「そうかな。自分では何も変わってないと思うけど」
そう言って、私は早苗を見た。
早苗は何も言わず、ただ少しだけ微笑んだ。
「ねぇ、直人くん。早苗と旅行に行ってきていいかな?
さっきマンションで話してたんだよ。茉莉花が始まったら、早苗もあまり休めなくなるから、その前に行こうって」
里奈ちゃんは早苗を見てから続けた。
「早苗は行きたいみたいだけど、直人くんのことが気になるみたいでさ」
私は少しだけ早苗の方に向き直った。
「俺のことは気にしなくていいよ。
里奈ちゃんの言うように、しばらくは休めなくなるかもしれないしな」
「それじゃ…あなたがそう言うなら、行ってこようかな」
早苗はそう言って、ニッコリと笑った。
「やったあ!旅行の計画はお任せあれ!
直人くん、お土産いっぱい買ってくるね」
里奈ちゃんは得意げに言い、胸を叩いた。
私はジャスミン茶を飲みながら、はしゃぐ二人を見ていた。
旅行かぁ…。
ふわりと、美緒のことが頭に浮かんだ。

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