ある日、陣さんから速達で手紙が届いた。
速達で届いたことなどなかったので、何かあったのかと急いで封を切った。
いつもの陣さんらしい冗談から入る内容だった。
読み進めると
「はっ?結婚?」思わず口に出た。
キッチンにいた早苗に聞こえたらしく
「結婚!?」と言いながら駆け寄ってきた。
私は早苗を手で制し、続きを読んだ。
どうやら陣さんは拘置所で結婚したらしい。いわゆる獄中結婚だ。
手紙にはぼかして書いてあったが、面会できるようにするため入籍したらしい。
その件で大事な頼みがあるから面会に来てほしいという内容だった。
早苗が目の前に座り、読み終えるのを待っていた。
「誰と誰が結婚したの?」少し興奮している。
私が内容を詳しく話すと、真剣な顔で黙って聞いていた。
話し終えると考え込む表情で
「これって騙して結婚するんじゃないよね?」と聞いてきた。
「違うと思うよ。今度面会に行って詳しく聞いてくるよ」と答えた。
「もし騙して利用するんだったら許せない!」と怒っていた。
陣さんはそんなことをする人ではないだろう。
とにかく明日にでも面会に行って詳しく聞いてみることにした。
夕方、インターホンが鳴り早苗が受話器を取った。
一言二言話すと、受話器を押さえ小声で「保護司!」と言った。
えっ、週に一度面接に行っているのにと思いながら玄関へ行くと、早苗がドアを開けて対応していた。
保護司は仕事が早く終わったので様子を見に来たとのことだった。
私を見て
「あれ。今日はお仕事休み?」と聞かれ、咄嗟に
「はい」と答えた。
「この時間は奥さんだけかと思って寄ったから」
早苗はスリッパを用意して部屋に通そうとしたが、保護司は様子見だけだと言ってすぐ帰っていった。
早苗はニコニコしながら
「奥さんだって」と上目づかいで照れていた。
その日の夜、この間会った二人目の知り合いから連絡があり、会わせたい人がいるとのことで明日の夜会う約束をした。
声のトーンからみて良い方向に進展があったようだった。
明日は動きの多い一日になりそうだと、ぼんやり考えていた。

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