早苗を起こさないように、そっとベッドから出る。
リビングのソファーに座り、コーヒーを飲みながら今日の予定を整理する。
朝一で井原君の面会と石鹸箱の差し入れ。
佐藤さんの件で、夜の仕事で知り合った者と二人会う予定だ。
詳しいことは会ったときに話すと伝えてある。
早苗には昼過ぎには戻ると置き手紙をして、マンションを出て拘置所へ向かった。
井原君に石鹸箱を差し入れしたと伝えると、子供のように目を輝かせて喜んでいた。
井原君は「判決が出たら今回は控訴せずに、そのまま懲役に行きます。
で、一日でも早く帰ってこれるようにするつもりです」
と真っ直ぐに私を見て言った。
その目を見て、これは再会の約束だと受け止めた。
拘置所を出て、一人目に会う知り合いに連絡を入れ、ファミレスで待ち合わせをする。
その人はクラブやスナック、ラウンジなどで長年働いており業界には詳しい。
ある程度の事情を説明すると、とにかくあたってみてくれることになった。
二人目の知り合いはランパブなど風俗系の水商売で長く働いている人だ。
連絡を入れると自宅のマンションに来るように言われた。
部屋にお邪魔して事情を説明すると、その人はこの業界ではよくある話だと言った。
だが七十代となるとキャストはもちろんスタッフでも考えにくく、この業界に関わっているなら風俗店か裏の風俗を経営しているか、オーナーになっている可能性が高いとのことだった。
とりあえず店の女の子にあたってみてくれることになった。
礼を言ってマンションを出た。時計を見ると昼前だった。一度マンションに戻ることにする。
早苗は食事の準備をしていた。
「おかえりー。パスタつくるけど食べるでしょ?」
「うん。いつものあれ?」
「もちろん!あれだよ!」
いつものあれとは昔ながらのナポリタンに目玉焼き付き。私の大好物だ。
ケチャップの焦げるいい匂いがしてきた。朝から何も食べていなかったので、がっつきながらこれまでの報告をした。
温かいナポリタンを口に運びながら、しばらく何も考えずにいた。

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